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自民党憲法9条改憲案に対する会長声明
2018.07.17

自民党憲法9条改憲案に対する会長声明

 

 現行憲法は,アジア・太平洋戦争の反省を踏まえ,恒久平和主義を基本原理の一つとして制定されたもので,かかる憲法下において,集団的自衛権の行使は禁止されているものと理解されてきたのであり,当会も,2014年(平成26年)5月14日に会長声明を発して以降,集団的自衛権の行使が現行憲法下において許容されないとの立場を一貫して繰り返し表明してきた。
 一方,本年3月25日,自由民主党(自民党)憲法改正推進本部は,憲法9条1項及び2項は残しつつ,新たに9条の2を設け,「前条の規定は,我が国の平和と独立を守り,国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず,そのための実力組織として,法律の定めるところにより,内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。」,「自衛隊の行動は,法律の定めるところにより,国会の承認その他の統制に服する。」とする条文イメージ(たたき台素案)を示した。
 この改憲案の「我が国の平和と独立を守り,国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」の内容は,条文上,一義的に明確でなく,憲法解釈上集団的自衛権の行使が容認されるか否かについては判然としない。もっとも,既に成立した安全保障法制において,存立危機事態における自衛の措置として集団的自衛権の行使は認められており,現実の法体系及び政治状況を前提にすれば,少なくとも政治的には集団的自衛権行使を容認する趣旨であると解される。
 そして,このような改憲により集団的自衛権の行使を憲法上容認することになるとすれば,憲法の基本原理である恒久平和主義の内実を従前の解釈より実質的に変更することとなる可能性がある。
 そうである以上,改憲に当たってはこの点について国民的議論を喚起し,国民の理解を得ることが必要不可欠というべきであるが,そもそも自民党改憲案では,恒久平和主義の内実を実質的に変更するものであるのかが明確でなく,国民的議論を回避するものとの批判を免れない。
 また,「必要な自衛の措置」の内容を憲法上明確にせず,「自衛隊の行動は,法律の定めるところにより,国会の承認その他の統制に服する」とするだけでは,国家権力行使の一態様である自衛権の行使が憲法上無限定となり,下位法による規律に白紙委任するのも同然であって,立憲主義に違背する危険性を否定できない。
 さらに,今回の自民党改憲案は,本来,憲法によって規律されるべき集団的自衛権の行使につき,下位法たる安全保障法制の成立を先行させて,集団的自衛権の行使容認を政治的に既成事実化した上で,集団的自衛権の行使につき憲法上容認するか否かを国民に対して正面から問うことなく,事後的に,なし崩し的にこれを正当化することにもなりかねない。
 このように,今回の自民党改憲案は重大な問題点と危険性を含むものであり,当会は,このことを国民に対して分かりやすく説明し,国民の間で議論が深められるよう引き続き責務を果たす決意である。
 
2018年(平成30年)7月17日
 
                       岡山弁護士会     
                         会長 安 田   寛
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