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高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
2016.03.09
高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
 
1 はじめに
 高市早苗総務大臣は、2016年(平成28年)2月8日の衆議院予算委員会で、野党議員の質問に対し、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と述べた上、政府が放送局に対し放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。
 その際「政治的に公平」の意味として、「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと例示し、総務省は「政治的公平」の解釈について「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との政府統一見解を発表した。
 また、これに先立つ2014年(平成26年)11月26日、政権与党である自民党報道局長福井照衆議院議員は、「報道ステーション(テレビ朝日)」の報道内容に関し、番組プロデューサー宛てに「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」であり「放送法4条4号の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と批判する文書を送っており、2015年(平成27年)4月17日には、「報道ステーション」の番組内で古賀茂明氏が自身の番組降板を巡って官邸から圧力があったと発言したことについて、自民党情報通信戦略調査会が、テレビ朝日の幹部に対し、事情聴取を行っている。
 高市早苗総務大臣の発言はもとより、政権与党の所属議員や自民党情報通信戦略調査会によるこれらの行為は、政権与党に批判的な言論を抑圧する意図に基づいており、以下のとおり、憲法21条及び放送法で保障される報道機関の報道の自由に対する重大な侵害行為であり、到底許されない。
2 表現の自由と報道の自由
(1)表現の自由の価値
 そもそも、表現の自由(憲法21条)は、「表現」そのものが個人の人格を発展させるという価値とともに、近代市民革命の原動力となった重要な権利の一つとして政府に対する批判を核心部分として発展してきたものであって、「表現(言論)」を通じて国民が政治的意思決定に関与するという価値を有することから、国民主権制度の下では極めて重要で、かつ、不可欠な人権である。
 また、「表現の自由」を含めた精神的自由権は、一旦傷つくとその回復が困難なことから、経済的自由権より優越した地位を有するとされ、原則として制限することはできず、制限が許されるとしても、必要最小限でなければならないとされている。そのため、憲法は表現の自由に対する事前抑制を原則として禁止している(憲法21条2項参照)。
(2)報道の自由の価値
 また、情報の「送り手」であるマス・メディアが発達した現代社会においては、社会生活において情報の持つ意義が飛躍的に増大している。そのため、個人が多種多様な情報や思想を求め、受けることができてこそ、個人それぞれが自分の思想や意見を形成し、それを表現することができると考えられている。
 したがって、憲法21条が保障する表現の自由は、思想や情報を発表し伝達する自由(送り手の自由)のみならず、多種多様な情報や思想を求め、受ける自由(いわゆる「知る権利」)も含むものとされている。
 さらに、マス・メディアが発達し、情報が集中している社会においては、「報道機関の報道」は、民主主義を維持するための国民の「知る権利」に奉仕する極めて重要な意義を有している。そして、「放送の自由」は、「報道の自由」の一環として、当然ながら、憲法21条によって保障されているのである。
3 放送法の趣旨
(1)基本目的
 放送法1条では、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を保障」し、「健全な民主主義の発達」を目的としている。これは、戦前の日本放送協会が国家権力の宣伝機関になっていったことの反省から、放送局が国家権力から独立したものになるように、国家権力の介入を防ぐために規定されたものである。それを受けて、放送法3条では、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」と規定している。この規定は、放送が周波数の割り当てという技術的理由によって無線局の免許という形で国家権力の介入を余儀なくされており、それゆえに国家権力による干渉や侵害の危険にさらされているところから、憲法21条の趣旨に照らして、当然のことをあえて明文化した規定である。
(2)放送法4条の趣旨
  ところが、放送法1条で、「放送による表現の自由」が保障されているにも関わらず、放送法4条では、放送番組の編集に対し、「政治的公平」や、「多角的論点の提示」等の制約基準が示されている。これは、一般的には、放送は、新聞や雑誌と違って、放送の電波は限られており、放送局の数も制限されるので、放送局の放送が「公平でない場合」等の影響力が大きいからだと言われている。しかし、もし、この放送法4条が法的強制力を持つ強行法規で、同条に違反したら何らかの制裁を受けるとなると、同じ法律内に相矛盾する規定が存在することになるので、放送法4条は、放送局に対する倫理規範と解釈すべきであるとされている。すなわち、放送法4条で求められる「政治的公平」等の制約は、放送局側の自主的判断に委ねるという規定にすぎないのである。よって、放送法4条は、放送局に法的義務を課すものではなく、電波法76条1項や放送法174条の「違反したら電波停止や業務停止」にされる「法律」には含まれない。
4 高市早苗総務大臣及び与党議員や自民党調査会の行為の問題点
 高市早苗総務大臣が、放送法4条の「政治的に公平」という文言を行政指導の根拠とし、さらに違反した場合に電波法76条1項による電波停止の可能性にまで言及することは、放送事業者に対して「時の政府を批判する報道」を控えさせるに十分な言動であり、「重大な萎縮効果」が生じる。
 さらに、政権与党所属の国会議員や自民党情報通信戦略調査会が、報道機関の報道内容を問題視して当該報道機関宛てに文書を送付したり、当該報道機関幹部に意見聴取を行ったりすることも、報道機関が、政権与党関係者らの出演を拒否され、あるいは放送免許を取り消される等の不利益を恐れて政権批判の報道を自粛することにつながる恐れがある。
 したがって、このような行為は、実質的には政権批判報道を禁止するに等しく、報道・放送の自由に対する重大な侵害行為であると言わざるを得ない。
5 結語
  よって、当会は、高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに、政権与党所属の国会議員及び自民党情報通信戦略調査会による報道機関への圧力に強く抗議するとともに、特に、高市早苗総務大臣に対しては、前記発言をすみやかに撤回することを求めるものである。
 
2016年(平成28年)3月9日
 
岡山弁護士会     
会長 吉 岡 康 祐
 
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