(2010.02.10)国選付添人制度の拡充を求める会長声明
1 少年審判において、弁護士付添人は、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年側の立場から手続きに関与し、家庭や学校・職場等の環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
少年審判において、少年を受容・理解したうえで、少年に対して法的・社会的な援助を行い、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
子どもの権利条約第40条2項(b)は、「刑法を犯したと申し立てられた全ての児童は、…防御の準備及び申立において弁護人(又は)その他適当な援助行う者をもつこと」と規定し、第37条(d)は、「自由を奪われた全ての児童は、…弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しており、身体拘束を受けた少年には必ず弁護士と接触する権利が保障されなければならないとしている。
しかしながら、現実には多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を負担することには消極的な場合がほとんどであって、国費により弁護士付添人を付する制度でなければ、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利は実質的に保障されることにならない。
2 2008年(平成20年)に審判に付された少年は、54,054人、そのうち観護措置決定により身体の拘束を受けた少年は、11,519人であったが、弁護士である付添人が選任されたのは、4,604人で、身体が拘束された事件のわずか40パーセントに過ぎない。 また、現行の国選付添人制度は、対象事件を重大事件に限定しているため、同年の対象事件に該当する少年の数は707人で、身体の拘束を受けた少年の6パーセントに過ぎないうえ、実際に国選付添人が選任された少年の数は、422人(4パーセント)であった。
刑事被告人の98パーセント以上に弁護士の国選弁護人が選任されていることと対比すると、あまりにも低率といわざるを得ない。
3 日本弁護士連合会は、弁護士付添人の援助を受ける少年の権利を保障するため、全国の会員から特別会費を徴収し、弁護士付添人の費用を援助する付添援助制度を実施している。
これにより、弁護士付添人選任数は従来に比べ増加するに至っている。
しかし、付添援助制度は、弁護士会員がいわば自腹を切って支えている臨時的・暫定的なものであって、恒常的なものと位置づけられるものではないし、選任件数の増加により財源の枯渇するおそれも生じている。
4 よって、当会は、現行の国選付添人制度を拡充し、少なくとも身体の拘束を受けた少年の全事件に弁護士付添人が選任されるよう、政府に対し少年法を早急に改正することを求める。
2010(平成22)年2月10日
岡山弁護士会
会長 東 ?司