(2010.07.12)給費制に関する会長声明
平成22年11月から、司法修習生に給与を支給する給費制が廃止され、必要な者に生活資金を貸与する貸与制が実施されることが予定されている。当会は、平成21年9月9日、給費制の継続を求める会長声明を出したが、いよいよ現実に給費制が廃止されるのが目前に迫ろうとしている現時点で、司法修習生の給与給費制を堅持すべきことを、改めて強く求めるものである。
1給費制の存在意義
裁判官、検察官、弁護士になるためには、司法試験に合格後に、司法修習を終えることが必要とされているところ、この司法修習は、裁判官、検察官、弁護士のいずれの道に進む者に対しても同じカリキュラムで行われ、法律実務に関する知識等のみならず、法曹としての高い職業意識と倫理観の修得も目的としている。そして、司法修習生には、修習に専念すべき義務が課されている。
司法修習生に対する給与給費制は、この司法修習制度の創設以来、これと不可分一体のものとして採用され、すべての司法修習生が貧富の差に関係なく司法修習に専念することを可能にし、法曹三者の統一修習を経済的側面から支えてきたものであり、この給費制があればこそ、あらゆる経済的階層から有為で多様な人材が法曹界に輩出されてきたのである。
2給費制廃止の弊害
法科大学院制度が導入され、法曹を志す者は司法修習生となるまでに多大な経済的負担を追っている現状の下で、給費制を廃止すると、司法修習中にも更に約300万円の負債を生じさせることになるため、多くの有為の人材が経済的事情により法曹への道を断念する事態につながり、経済的富裕層のみが法曹になっていく社会を現出させかねない。
また、給費制は、法曹三者、とりわけ弁護士の公共性・公益性を担保する役割を果たしてきた。弁護士・弁護士会による各種の公益活動を支える弁護士の使命感は、給費制の下での司法修習制度によって醸成されてきたものであるところ、給費制の廃止は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とすべき弁護士の在り方をも変質させかねない。
以上のとおり、給費制を廃止することは、高い専門的能力と職業倫理を備えた法曹の養成を担ってきた司法修習制度の存続を危うくし、ひいては司法制度の利用者である国民の利益を損なうものであることから、当会は、司法修習生の給与給費制を堅持することを強く求めるものである。
2010(平成22)年7月12日
岡山弁護士会
会 長 河 村 英 紀