(2011.09.12)提携リース契約を規制する法律の制定を求める意見書

提携リース契約を規制する法律の制定を求める意見書
意見の趣旨
第1 提携リース契約において,客観的に見て極めて不適切・不合理な内容の契約により多数の被害が生じている現状を踏まえ,これを適切に規制する下記内容の立法措置を至急行うことを国に対して求める。
1 リース会社とサプライヤーとの一体的取扱い
サプライヤーがユーザーに対して行なった説明は,リース会社が行ったものとして扱うという明示の規律を置くこと
2 リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止
リース会社は,リース物件(リース契約の対象物件)の市場価格の調査義務を負い,リース料総額がこれを著しく超えるリース契約の締結を禁止すること
リース物件が市販されていない場合は,同様の用途で,他に容易に入手し得る物件と比較して,リース料総額がこれを著しく超えるリース契約の締結を禁止すること
また,物件価格が不適切であったり,リース契約の対価に役務提供の費用が実質的に含まれていた場合には,ユーザーは,当該リース契約を取り消すことができるものとすること
3 リース物件の限定
リース物件は,動産およびソフトウェアに限られるものとし,役務はリース物件とはできないことを明示すること。実質的にリース料に役務提供の対価を含める脱法的な扱いを明示的に禁止すること
4 残リース料上乗せリースの禁止
既存のリース契約の解約を伴う場合において,その残リース料を清算するための費用を,新たなリース契約のリース料に上乗せすることを禁止すること
5 リース料率の規制
リース料率に適正な上限を設けること
6 適切な契約内容の説明義務
リース会社及びサプライヤーは,リース契約の内容について概要書面及び契約書面作成交付義務を負い,その内容は,動産及びソフトウェアの名称及びその価格,当該動産等に附帯する損害保険費用がある場合はその内容及び価格,当該動産等の設置・設定のための費用がある場合はその内容及びその価格,リース料率,中途解約の可否等とすること
 7 クーリング・オフ
ユーザーは,第6項が定める契約書面を受領した後相当期間はリース契約のクーリング・オフができるものすること
 8 不招請勧誘禁止
 リース契約についての不招請勧誘を禁止すること
 9 支払能力調査義務・過量販売の禁止
 リース会社は,ユーザーの支払能力調査義務を負い,その額を超える契約の締結や過量販売を禁止すること
 10 厳格な行政ルールの導入
 提携リースについては,販売信用に準ずるものとして,割賦販売に準じた規律を設け,経済産業省等への届出・登録義務を課した上で,報告徴求,立入検査,業務改善命令等の行政ルールを導入すること
第2 併せて,法制審議会における民法(債権法)改正の検討作業において,提携リース契約被害について考慮がされないままに,ファイナンス・リース契約が典型契約として規定されることのないよう,十分慎重に議論を行うことを求める。
意見の理由
第1 提携リースとその被害
1 提携リースとは,サプライヤーとリース会社との間に提携関係があるため,サプライヤーがファイナンス・リース契約締結の交渉・申込手続を代行するリース契約のことである(なお,経済産業省は提携リースのうち,訪問販売の形式が取られるものを「リース提携販売」の用語で呼んでいる。本意見書においては,フルペイアウト方式のファイナンス・リース《比較的長いリース期間を設定し、リース料総額がリース物件の取得価額及び金利、税金、保険料等の諸費用のおおむね全額を回収するようにリース料を設定し、かつ、実質的に中途解約を禁止したリース契約》でリース会社とサプライヤーとの間に提携関係があるものを「提携リース」という。)。
この仕組みを利用して,リース会社と提携関係のあるサプライヤーの販売員が自宅の一部を店舗あるいは作業場として利用しているようなユーザーを訪問して,「今使っている電話機はいずれ使えなくなる」「この電話機に交換すれば電話代が今よりも安くなる」,「既にリースを組んでいるならば,当社(サプライヤー)が既リースの解約手続きをしておく」なる旨の詐欺文言による勧誘を行い,これをもって「今の電話機が使えなくなる」,「電話代が安くなる」,「既リースについては今後リース料を払わなくても済む」等と信じたユーザーが,いわゆる「ビジネスフォン」と呼ばれる高機能事務用電話機について,その物品価格を遙かに上回る高額な価格設定でリース契約を締結させられる事例が多数報告されている。
また,近年では,100万円(場合によっては200万円)を超えるホームページ作成という役務提供の対価を2万円程度で市販されているホームページ作成ソフトと機能的に変わらないソフトウェア等のリース契約を装って契約させる事例や,警備契約という役務提供の対価をリース料総額に比較してはるかに安価な警備システム(防犯カメラ,録画システムなど)等をリース物件に設定してリース契約を締結させる事例が発生している。
本来的なリース契約においては,ユーザーが自らの事業に使用する機器について,導入の必要性を感じて販売店と価格を含めて協議を行い,与信を得る方法としていくつかの選択肢の中からリース契約を選択するため,ユーザーは機器の必要性についても,価格(リース料総額)の相当性についても認識を有している。
ところが,提携リースにおいては,通常,訪問販売の方法により突然訪れた販売員が,前述の欺罔文言によって,機器導入の必要性についての欺罔を行い,価格(リース料総額)の相当性についての検討機会を奪う上,ユーザーは自ら必要性を感じていた機器ではないため,その相当価格についての知識を事前に有することはない。
そして,後日,当該機器を導入する必要がなかったことや,あまりに高額なリース料総額を知ったユーザーが,リース会社に対して解約を申し入れても,リース会社は,サプライヤーの勧誘行為はリース会社には無関係である,リース契約上中途解約が認められない,事業者には特定商取引法が適用されずクーリング・オフは認められない,といったことを理由に一切解約に応じようとしない。
このように,リース会社は,リース会社とサプライヤーは別法人格であり,リース契約の当事者はあくまでもユーザーとリース会社の2当事者のみであることを殊更強調し,サプライヤーの販売方法に問題があったとしても,リース契約の帰趨には影響がない旨を主張する。
しかしながら,このリース会社の主張は,提携リースの実体を敢えて無視したものであり失当であるといえる。
なぜなら,提携リースにおいては,サプライヤーが熱心に勧誘を行う等の営業努力によってリース会社は利益を獲得するという密接な依存関係が築かれているためである。
即ち,リース会社は,自ら経費を掛けて営業をかけることなく,サプライヤーの営業努力により,ユーザー数を確保し,リース料を収得できる。
そして,サプライヤーは,ユーザーからリース契約を取れさえすれば,リース会社からリース物品代金名目の収益を得ることができるため,ユーザーへ熱心にリース契約の勧誘行為を行なうのであり,その結果,上述したような,物品価格を遙かに上回る高額な価格設定をしているにも関わらずそれを秘した詐欺的な勧誘が行なわれる場合が少なからず存在するのである。
このように,提携リースにおいては,リース会社はサプライヤーの営業によって収益を上げ,また,その構造上,サプライヤーがリース契約の成約のために無理な勧誘を行なう危険性が必然的に内在しているのであり,この仕組みを悪用してユーザーの無知につけ込むサプライヤーも多く存在する実態がある。
2 このような提携リースの特質を利用した悪質なリース契約に関する相談件数は,国民生活センターの集計によると,平成12年から平成17年にかけて年々増加し,平成12年度には2618件であった相談が,平成13年度3511件,平成14年度4853件,平成15年度5830件,平成16年度7352件,平成17年度8696件と急増してきた。
その後,平成18年度5498件,平成19年度3807件,平成20年度2973件と減少はしているが,この減少傾向は,経済産業省が平成17年12月6日付で特定商取引法の通達を改正したことや,平成18年,京都弁護士会の有志による弁護団が結成され,その後も全国各地で電話機等リース被害弁護団が結成されて,リース会社に対応してきた結果ではあるが,未だ決して少ない相談件数ではない。
又,リース事業協会に対する相談件数は平成19年度が3,778件,平成20年度が4,249件,平成21年度が4,532件でありむしろ増加している。
更に,リースの契約対象として,電話機等から電話機等の事務用機器以外の物件,ホームページ作成用ソフトに変化し,リース契約を巧妙に利用した新たな被害事案が増加している。
第2 立法の必要性
1 司法的救済
以上に指摘した被害を救済するため,訴訟等において,ユーザーは,サプライヤーが虚偽の説明があった場合,詐欺取消をし(民法96条1項),提携リースにおけるリース会社とサプライヤーとの関係について,代理,表見代理ないしは契約締結補助者等の関係があり,もしくはリース会社に効力が及ばないとの主張が信義則上許されないとの法的主張や,消費者契約法による取消,特定商取引法によるクーリング・オフ,公序良俗違反による無効(内容自体の社会的妥当性を欠き,契約締結手続が社会的妥当性を欠く),安全配慮義務違反ないし不法行為(リース会社自身の不法行為に基づく損害賠償責任ないしは使用者責任)に基づく損害賠償責任などの法的責任を追及している。
しかし,当該主張は,割賦販売法とは異なり,明文化されていないため,個々の裁判所の判断によって司法的救済が受けられない場合もある。よって,リース会社とサプライヤーの関係及びこれに基づくリース会社が負うべき義務については,立法によって明確化される必要がある。
2 立法の必要性
経済産業省が平成17年12月6日付で「社団法人リース事業協会に対する指導」として,「提携販売事業者の総点検及び取引停止を含めた管理強化」等の指導をしているにもかかわらず,平成18年1月以降の苦情も多数発生し,ホームページ,セキュリティ関連機器など,電話機以外のリース契約についての被害事例が多くなっている。
リース事業協会は,何度も適正化を目指した告知を行っているが,被害は減らず,リース会社は訴訟の場で,リース事業協会の告知に反する主張を行っている。
このようなことからすると,リース会社及びリース事業協会の自浄能力により解決する事は期待できない。
また,ユーザーの救済が図られた裁判例は存在しているものの,ユーザーが敗訴する場合もあり,その最も大きな要因は,ユーザーが,リース会社とサプライヤー間の内部関係を把握するには限界があるということや,クーリング・オフの主張についても,事業の規模,リース物件の使用状況及びリース物件の必要性等,ユーザーが過大な主張立証責任を負担させられていることにある。
よって,かかるユーザーとリース会社との間の主張立証責任の不均衡を是正し,もって,第1に述べた被害を防止するためには,第3に述べる内容等について,新たな法律をもって明確に規定する必要がある。
そもそも,ある者が,ある物件の使用を欲しているにもかかわらず,その購入資金を現金一括で支払うことができない場合に,第三者の金融によってこれを可能とする方法は,貸金,割賦販売,そしてリースの三種類が考えられる。このうち,前二者については,貸金業法,利息制限法,出資法及び割賦販売法という規制法が存在し,リースのみ規制法が全くないというのが現状である。このような現状では,消費者被害は,規制の緩い(ない)リースの分野で多発することは容易に推測できるところであり,実際にも消費者被害が多発している現実がある。とりわけ,提携リースは,法規制されている割賦販売と構造が類似している。この点からも,提携リース被害の増加に対して適切な法規制を行うことはまさに急務であり何ら過度な規制ではない。
3 民法(債権法)改正との関係
本意見書で述べるとおり,サプライヤー及びこれと提携するリース会社が,無知無経験の消費者や中小零細事業者から,リース契約の形式を利用して,適切な説明を行わないまま,リース物件との対価的均衡を欠く契約を締結させ,本来必要のない金員を支払わせているという実態は看過できないものである。
そうしたところ,現在,法制審議会において民法(債権法)改正に向けた議論が行われており,学者グループが作成した「債権法改正の基本方針」においては,ファイナンス・リース契約を典型契約として民法典に規定するとの提案がなされている。しかしながら,「債権法改正の基本方針」には,リース契約の基本型のみが記載されているだけで,上記のようなリース契約の病理現象については特段考慮されておらず,立法としては極めて不十分である。むしろ,そればかりか,リース契約にいわばお墨付きを与え,提携リース被害を固定化しかねないおそれすらある。本意見書において詳細に触れることはできないが,仮に,リース契約を立法によって規律するのであれば,少なくとも,本意見書で述べるような,提携リース契約による被害実態について十分に慎重な議論をし,これを踏まえた規制がなされなければならない。
第3 必要な立法の具体的内容とその理由
1 リース会社とサプライヤーとの一体的取扱い
サプライヤーがユーザーに対して行なった説明は,リース会社が行ったものとして扱うという明示の規律を設けるべきである。
ことに,リース被害の発生端緒の大部分が,サプライヤーの訪問販売によってなされるリース物件導入の必要性についての欺罔であることに鑑みれば,被害防止のためには必須の対応である。
判例上,リース会社とサプライヤーとの関係は,「割賦購入あっせんの場合の,販売業者と割賦購入あっせん業者との関係よりもさらに密接な関係にあるということができる。」としたものもあるが,上記被害実態のとおり,提携リースにおいて,リース会社はサプライヤーの営業によって収益を上げているところ,取引構造上,サプライヤーがリース契約の成約のために無理な勧誘を行なう危険性が必然的に内在しているにも関わらず,リース会社のサプライヤーを管理監督する責任が果たされているとは到底言い難いのが現状である。サプライヤーがユーザーに対して行なった説明は,リース会社が行ったものと扱うという明文の規定を設け,サプライヤーによる不適切な勧誘行為等があった場合には,ユーザーはリース契約を取り消すことができることを明文で定めるべきである。
2 リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止
(1)リース会社は,リース物件の市場価格の調査義務を負い,これを著しく超えるリース料総額になるリース契約の締結を禁止すべきである。リース物件が市販されていない場合は,同様の用途で,他に容易に入手し得る物件と比較して,リース料総額がこれを著しく超えるリース契約の締結を禁止すべきである。
(2)また,仮装された役務提供リース契約を防止するためには,リース契約の対象がソフトウェアであり,同様の用途とする他に容易に入手し得るソフトウェアに比して価格が高額である場合,その比較において高額なソフトウェアをリース物件とする理由をユーザーに確認するべきである。
   サプライヤーが継続的な役務提供を約して,リース契約を締結する仮装された役務提供リースを禁止する理由は,サプライヤーはリース期間に対応する役務の対価にあたる代金をリース会社より契約締結時に入手する事になるので,いきおいその後の役務提供を満足にしない事やサプライヤー自体が破綻してユーザーが役務提供を受けられなくなる危険性が高いからである。そして,フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約では,ユーザーは解約しても全てのリース料を支払わなければならず,役務とリース料が対等な対価関係に立たないからである。
(3)既に述べたように,悪質なリース被害は,リース物件の価格についてもサプライヤー及びそれらのリース物件を数多く取扱うリース会社はよく知り得る状況・立場にあるのに,ユーザーがリース物件等の適切な価格を把握していないためサプライヤーから騙されやすい状況が利用されている。
リース提携販売においては,リース会社がサプライヤーの提示する法外な販売価格をそのまま受け入れ,それをリース料としてユーザーに転嫁することによって,多大な被害が発生しており,この点の規制が悪質リース被害の防止のためには,極めて重要である。
リース会社は,一般に,相応の規模を有する大企業であり,リース物件の市場価格の調査は容易であり,かつ,リース物件を不当に高額にしたり,不当に高額なホームページ作成ソフトをリース物件とするリース契約についての苦情が多発していることを熟知している。
(4)よって,サプライヤーを指示・監督できる立場にあるリース会社にはこれを防止するべき責任を認め,リース会社に適正な物件価格の調査義務を課し,またリース物件がソフトウェアである場合,ユーザーの意思確認に厳格な手続を要求するべきである。加えて,物件価格が不適切であったり,リース契約の対価としてソフトウェアないしその使用許諾権以外の役務提供の費用が実質的に含まれていた場合,当該リース契約を取り消すことができることにすべきである。
3 リース物件の限定,残リース料上乗せリースの禁止等
リース契約の対象物件(リース物件)は,動産およびソフトウェアに限られるものとし,残リース料や役務をリース物件とすることはできないことを明示するとともに,実質的にリース物件に役務提供を含める脱法的な扱いも禁止することを明示すべきである。
もともとリース契約とは,目的物を直接購入する資金的余裕のない者が物件を買い取ったリース会社からその物件をリースするという方式をとるものである。リース契約の本質は設備の売買及び賃貸借なのであるから,設備ではない役務を含めることは,そもそもリース契約の本質に反する。リース物件の適格性が認められるためには,それが返還されること,移動できるものであること,汎用性があるものであると,そして特定できるものであることが必要なのであり,リース料の算定基準は,?基本額(物件購入価格。見積残存価格が生じている場合は物件購入価格−見積残存価格),?金利,?固定資産税,?保険料,?販売管理費用(手数料)及び?利益等であり,これらの合計がリース料総額となる。
よって,悪質なリース被害を防止し,適切なリース契約を締結するには,リース物件の対象を動産及び近時リース物件として税務上の取扱を容認されるに至ったソフトウェアに限定した上,不明朗なリース料の算出方法を,ユーザーに対して明確に説明するために,リース契約書上,物件価格その他リース料算出の根拠となる全ての要素を明示させるべきである。そして,このような立法形式となっても,提携リースにおいては,リース会社は同時に物件を取得するサプライヤーから見積書の交付を受けそれらの物件価格の適切性ひいてはリース契約の内容の妥当性を判断することが容易にできるのであるから,リース会社にとっても何ら不合理性はない。
また,既存のリース契約の解約を伴う場合において,その残リース料を清算するための費用を,新たなリース契約のリース料に上乗せすることも禁止されるべきである。
その理由は,このようなリース料設定の方法が許容されると,リース期間中に不要な中途解約を繰り返して,リース料総額を雪だるま式に増加させるいわゆる次々リースの温床となっているからである。
さらに,リース契約が金融的側面を有し,リース料率が貸金における利息に対応する以上,そのリース料率の適正な制限を設けるべきである。
4 適切な契約内容の説明義務
これまでに述べてきた内容を,リース契約書上に明示し,かつリース会社に十分な説明義務を負わせることにより,悪質な提携リース被害が防止できる。
したがって,リース会社及びサプライヤーは,リース契約書の内容について,?動産及びソフトウェアの名称及びその価格,当該動産等に附帯する損害保険費用がある場合はその内容及び価格,当該動産等の設置・設定のための費用がある場合はその内容及びその価格,?リース契約の対象が市販されていない場合は,同様の用途とする他に容易に入手し得る物件の価格,?リース料率,?中途解約の可否,及び?契約書面を受領した後相当期間はリース契約のクーリング・オフができること(クーリング・オフ権については5で述べる)を明示し,またその内容についての説明義務を負うべきである。
5 クーリング・オフ
ユーザーは,前述した契約書面を受領した後相当期間は,リース契約のクーリング・オフができるようにするべきである。
何故なら,提携リース契約におけるユーザーの地位は,事業者であったとしても,上記の法に定められた「消費者」の地位と同様に,リース会社との間に構造的な格差が存するからである。
6 不招請勧誘禁止
不招請勧誘については,原則的に禁止されるべきであるとの意見も強く,また,近年は,被害実態に応じて,金融商品取引法等の立法においても,不招請勧誘の禁止は積極的に導入される傾向にある。
そして,電話機等の通信機器の提携リース契約については,ほとんど全ての事案が,自ら訪問を招請したのではなく,サプライヤー側からの不招請勧誘に端を発しているのであるから,このような勧誘を禁止することは必要かつ相当である。
7 支払能力調査義務・過量販売の禁止
リース会社は,ユーザーの支払能力調査義務を負い,その額を超える契約の締結や過量販売を禁止すべきである。
リース被害においては,ユーザーの資力からして極めて不相当な金額をリース料総額とする契約が締結されていたり,また,リース物件も,ユーザーが真に必要とするものに比して,質的量的に過剰な事案が多々存在するから,リース会社は,ユーザーの支払能力調査義務を負い,その額を超える契約や,あるいは,ユーザーにとって不必要なリース物件について質的量的に過剰な販売が行われないように配慮する義務を負うとすべきである。
8 厳格な行政ルールの導入
リース業については経産省ないし消費者庁への登録制とし,立入検査,改善命令等の行政監督権限に服することにするべきである。
リース業については,貸金業登録をしているリース会社もあるが,リース業自体については,特段何らの登録が必要となるものではない。しかしながら,上記のとおりリースによる被害は拡大しており,リース事業協会の自浄能力もないから,経済産業省ないし消費者庁等への登録制とし,立入検査,改善命令等の行政監督権限に服させるべきである。
第4 結語
近年における悪質な提携リース被害の実態及びこれに対する規制立法の必要性については,既に述べてきたとおりであるところ,岡山県及び広島県においても,昨年,大規模な提携リース被害の存在が明らかになった。
これは,ユーザーに対するキャッシュバックをうたい文句にして,主に個人事業主や中小企業等を相手に,市場価格に比して遥かに高い値段で,複合機,警備システム,パソコンソフト等のリース契約を結ばせていたサプライヤーが破綻したために,サプライヤーからキャッシュバックが行われ続けることを信じてリース契約を結んでいたユーザーの中で,リース会社に対する支払が困難となるユーザーが多数発生したという事案である。
現在,これらのユーザーのうち約170名が,各リース会社を相手方として,各リース会社の責任を追及する訴訟を提起しているところであるが,このような被害の発生も,上記したような内容の規制立法が存在すれば防げた可能性が極めて高い。
同様に京都でもキャッシュバックをうたい文句にして、次々とリース契約を結ばせていたサプライヤーが破綻して、高額なリース代金の支払いだけが残る事例が発生している。
このように,悪質な提携リース被害は,沈静化する傾向は全く見られず,未だ多数の被害者が潜在的に存在していることは明らかであって,立法による解決が一刻も早く図られなければならない。
よって,当会としては,意見の趣旨記載のとおりの意見を述べるものである。
                                                                                                                    以 上
2011年(平成23年)9月12日
岡山弁護士会
会 長  的  場  真  介

この記事の作成者

岡山弁護士会
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TEL.086-223-4401(代)
FAX.086-223-6566
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