貸金業規制緩和に反対する会長声明
報道によると,自民党は,財務金融部会の下に設けた「小口金融市場に関する小委員会」(小委員長・平将明衆院議員)にて,貸金業法が定める金利規制及び総量規制を緩和する法改正を検討しているとのことである。その内容は,一定の条件を満たす貸金業者を「認可貸金業者」と認定し,認可貸金業者に限って,(1)上限金利について利息制限法の適用が除外され,上限金利が年29.2パーセントとされるとともに,(2)個人の総借入額を年収の3分の1以内に制限する総量規制からも除外され自主規制に委ねられる,というものである(以下「本改正案」という。)。
しかし,現行貸金業法は,自己破産や自殺の急増の原因となった多重債務問題を解決すべく,上限金利の引下げ及び総量規制を柱として,平成18年12月に自民党政権下において与野党一致で成立し,平成22年6月に完全施行されたものである。平成19年から実施された,官民をあげた「多重債務問題改善プログラム」に基づく相談窓口の拡充等も,上限金利の引下げ及び総量規制と相まって,多重債務問題の大幅な改善に重要な役割を果たしてきたところである。
しかるに,本改正案は,現行貸金業法が成立した上記の経緯を無視し,多重債務者救済という時代の流れに逆行するものであり,決して許されるものではない。
本改正案は,零細な中小企業や個人の短期融資の需要に応えることを目的としているが,かかる目的を実現するためには,低金利の融資制度こそが必要とされるのであり,生活や事業の経営を圧迫しかねない高金利による貸付けや,個人について年収の3分の1を超える多額の借入れを容認する必要はない。
また,「認可貸金業者」とされる要件についても,⑴貸金業務取扱主任者が営業所・事務所ごとに一定割合以上いること,⑵研修体制が整備されていること,⑶過去3年間に業務停止命令を受けていないこと,⑷過去5年間に認可を取り消されていないこと,⑸純資産額が一定以上あること,⑹返済能力調査やカウンセリングなどの体制を整備していること,という極めて緩いものであり,過去の多重債務問題が,かかる要件を全て具備している大手の貸金業者を主導として引き起こされたという事実が全く考慮されていない。
このように,本改正案は,これまでの国をあげての多重債務問題に対する取り組みの成果を完全に無にするものである。
当会は,高金利による貸付けを容認し,過剰融資を促進,ひいては根絶されるべき多重債務問題を新たに生み出す本改正案に断固として反対する。
2014(平成26)年9月17日