(2024.12.11)地方消費者行政に対する恒久的な財源確保を求める会長声明

1 消費者庁の令和6年版消費者白書によると、令和5年度の全国の消費生活相談件数は約90.9万件であり、前年よりも約3.3万件増加している。同白書によると、令和5年の消費者被害・トラブル推計額(既支払額(信用供与を含む。))は約8.8兆円であり、前年度よりも2兆円以上増加している。また、岡山県が発表した令和5年度の消費生活相談の状況の概要によれば、同年度に岡山県内の消費生活相談窓口で受け付けた消費生活相談総件数は6,235件であり、前年度に比べ5.9%減少したものの、相談件数は相変わらず多い傾向にある。

2 このように消費者被害は後を絶たず、依然として深刻な状況である。これらの消費者被害を救済し、被害を未然に防止するためには、相談体制の確保をはじめ地方消費者行政の継続・強化が非常に重要である。そのためには、国が、地方消費者行政にかかる経費を継続的に担っていくことが不可欠である。
 しかしながら、地方消費者行政に対する国の財源措置は年々減額されており、さらに、以下のとおり、地方消費者行政を継続的に行うのに足るものとなっていない。

3 平成26年に開始された地方消費者行政推進交付金(なお、平成30年から地方消費者行政強化交付金に名称及び内容が変更されている。)は、消費生活相談員の人件費にも充てることができ、長い間地方の相談体制を下支えしていた。しかし、令和6年度末及び令和7年度末に多くの自治体で同交付金の活用期限が終了することとなる。同交付金が途切れてしまうと、多くの地方公共団体の財政状況が厳しい状況にあるなか、消費生活相談員の減員や相談窓口開設日の削減等に追い込まれる恐れが大きい。
 消費生活相談員は、消費者被害に遭った消費者の相談に対応し、消費者への助言をし、事業者との交渉を行うなど、消費者被害の救済において重要な役割を担っている。そのため、消費生活相談員の減員や相談窓口開設日の削減は、消費者の安全・安心な生活が脅かされることが懸念される。
 また、従前の相談体制を維持しようとする場合、消費者教育・啓発等に充てていた予算を相談体制に関する予算に充てる必要があり、消費者行政全体としての後退が不可避となる。

4 以上より、消費者被害を防止・救済するため、当会は、国に対し、地方消費者行政強化交付金の活用期限措置を延長するとともに、消費生活相談員配置や消費者教育・啓発の実施等、地方公共団体が地方消費者行政を推進するために必要な、継続的な予算措置の実現を求める。

以上

 
2024年(令和6年)12月11日

岡山弁護士会     
会長 井 上 雅 雄

 


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