(2022.10.24)被災者生活再建支援金制度における加算支援金未申請世帯への適切な支援と加算支援金申請期限の延長を求める会長声明
平成30年7月豪雨災害から4年が経過した。被災された方で生活を再建された方、また再建に向かって日々前進されている方、そして被災された方を日々支援されている方々に敬意を表する。
当会も、発災直後から現在まで無料法律相談会を倉敷市真備町で開催することを中心に被災者支援を行ってきた。今後も、岡山県を災害に強く早期に災害からの復興が実現できる地域にするべく活動していく所存である。
さて、被災された方の生活再建を支援するため、被災者生活再建支援金制度が存在しており、一定の要件を充たした場合、住宅の被害を受けた世帯を支援するための基礎支援金と新たに住宅を建設・購入や賃借、補修した場合には加算支援金が支給される。
このうち加算支援金(50万円から200万円)の申請期限は、災害発生日から37ヶ月とされているが、平成30年7月豪雨災害においては、2度にわたって申請期限が延長された結果、現在の申請期限は令和5年8月4日までとなっている。
しかし、令和4年8月末現在、倉敷市内で加算支援金の支給対象となったのは4803世帯であるのに対し、倉敷市内で基礎支援金の支給対象となったのは5477世帯であり、その差が600世帯以上ある。
また、令和4年7月末の時点で加算支援金の支給対象となったのは4801世帯であり、同年8月までの1ヶ月間で加算支援金の支給対象世帯はわずか2世帯しか増えていない。
確かに、公営住宅に入居した場合、加算支援金の支給要件を満たさないが、平成30年7月豪雨災害後、災害公営住宅は100軒強しか作られていない。家族の家に同居するようになった方など自宅再建等の要件を満たさない世帯がいるであろうことを考えても、数百世帯は加算支援金の支給要件を満たしているにもかかわらずなお申請がなされずに支給を受けられていないのではないかと思われる。
そこで、当会は、このような加算支援金の未申請世帯に対して適切な支援をするため、倉敷市、国、岡山県に対して以下のとおり要望する。
まず、倉敷市に対しては、①早期にアンケートを実施するなどして加算支援金の支給要件を満たさない世帯数を把握し、加算支援金の支給要件を満たしているのに支給がされていない未申請世帯数を公表すること、及び②倉敷市では、加算支援金の申請用紙を未申請世帯に送るなどの対応をしているとのことであるが、それでもなお申請がされていない世帯は、申請方法が分からない、精神的に申請する余裕がないなどの問題を抱えている可能性が高い世帯と考えられるため、一人ひとりにオーダーメイドの支援を行う災害ケースマネジメントの一環として、全戸訪問を実施し、訪問世帯が問題を抱えるのであればその問題の解決を支援し、支給要件を満たす全世帯に対し加算支援金の支給が実現することを要望する。
次に国に対しては、①被災者が基礎支援金を申請した時点で被災者生活再建支援金を受給する意思を自治体が把握できている以上、被災者から加算支援金の申請がなくとも、自治体が建物の再建等の事実を確認できた場合には、申請なく加算支援金が支給できるよう制度を改正すること、及び②上記のような制度に改正されるまでの間、基礎支援金の申請と建物の再建が確認できた場合には加算支援金の申請があったものとみなす「みなし申請」の運用を直ちに開始できるよう、運用を変更することを要望する。
最後に、岡山県に対しては、上記した倉敷市による未申請世帯へのサポートや国による制度改正、運用変更には一定の時間がかかることが見込まれるため、加算支援金の申請期限を現在の令和5年8月4日からさらに1年間延長することを要望する。
以上
2022年(令和4年)10月24日
岡山弁護士会
会長 近 藤 剛