(2022.08.16)死刑執行に強く抗議するとともに、全ての死刑執行を直ちに停止して、死刑制度廃止の立法措置を講じることを求める会長声明

 2022(令和4)年7月26日、東京拘置所において、1名について死刑が執行された。岸田内閣が組閣され、古川禎久法務大臣(当時)が就任してから、2021(令和3)年12月21日の3名の死刑執行に続く、2回目の執行であり、同死刑囚は再審請求中であった。
 死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰である。人間が判断する以上誤判・えん罪の可能性は常に存在するところ、死刑については、誤判によって生命が侵害された場合、失われた生命を取り返すことはできず、権利回復を図ることは不可能である。
 国際社会においては、死刑制度廃止が趨勢となっている。近年、法律上及び事実上の死刑制度廃止国は3分の2以上に上り、OECD(経済協力開発機構)加盟国(38か国)に限れば、死刑制度存置国は日本、韓国及び米国のみである。
 加えて、韓国は20年以上にわたって死刑の執行を停止している事実上の死刑制度廃止国であり、2020(令和2)年7月に行われた国連総会第三委員会(人権)において、死刑制度廃止を視野に入れたモラトリアム(死刑執行の停止)を求める決議案に賛成票を投じるなどしている。また、米国においても、バイデン大統領は、大統領選の選挙公約の中で死刑制度廃止を明記し、2021(令和3)年7月1日、ガーランド司法長官は、連邦レベルでの死刑執行を一時的に停止するとの方針を明らかにしている。このように死刑制度廃止は国際的な潮流といえる。
 日本弁護士連合会は、2016(平成28)年10月7日開催の第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。この宣言は、国に対し死刑制度の廃止と刑罰制度全体の改革を求めるものであった。さらに、中国地方弁護士会連合会においても、2019(令和元)年11月1日開催の中国地方弁護士大会で、「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。
 本年6月には、懲役刑と禁錮刑が一本化されて拘禁刑に再編する刑法改正がなされた。これは、応報を主眼とする刑罰制度から更生と教育を主眼とする刑罰制度への移行を意味するが、死刑制度は、罪を犯した者の更生を志向しない唯一の刑罰であり、かかる拘禁刑の理念と相容れないものである。
 当会は、これまでの死刑執行に対しても繰り返し抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対して改めて強く抗議するとともに、全ての死刑の執行を直ちに停止し、死刑制度を廃止する立法措置を早急に講じることを求めるものである。

以上

 

2022年(令和4年)8月16日

岡山弁護士会     
会長 近 藤   剛

 
 


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