(2021.07.15)夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷決定を受けて、速やかな選択的夫婦別姓制度の導入を求める会長声明
1 本年6月23日、最高裁大法廷は、夫婦同氏を強制する民法750条の規定及び夫婦が称する氏を婚姻届出の必要的記載事項とする戸籍法74条1号の規定について、「民法750条の規定が憲法24条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり、・・・(略)・・・上記規定を受けて夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項と定めた戸籍法74条1号の規定もまた憲法24条に違反するものではないことは、平成27年大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。」とし、夫婦同氏制が合憲であるとの判断を示した。
そして、同決定は、「この種の制度の在り方は、平成27年大法廷判決の指摘するとおり、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と結論付けている。
2 しかし、このような最高裁の態度は、極めて重要な憲法判断を国会に丸投げしようとするものであり、司法としての責任を放棄し、憲法判断を実質的に回避したも同然である。
3 現在、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する割合は、反対の割合を上回っており、特に、18歳から29歳までは賛成50.2%、反対19.8%、30歳から39歳までは賛成52.5%、反対13.6%となっており、特にこれから婚姻することを考える者が多いと思われる世代を中心として選択的夫婦別姓制度の導入を支持する世論は高まっている(2017年内閣府「家庭の法制に関する世論調査」より)。
しかし,国会における議論は遅々として進んでいない。法制審議会が1996年に選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正を答申したにもかかわらず、いまだ法案が提出されていないのである。
さらに、国の第5次男女共同参画基本計画においては、「夫婦別姓」という文言自体が削除されるなど、むしろ、議論が後退している感さえある。
4 また、今回の決定において、問題とされた各規定が憲法24条違反として違憲であるとの反対意見(裁判官宮崎裕子、裁判官宇賀克也)でも指摘されているとおり、妻側が姓を変更する夫婦の割合が約96%に上るという性別による不平等が存在している実態があり、また、平成27年大法廷判決後の旧姓使用の拡大は、夫婦同姓制度の合理性の実態を失わせている。
さらに、日本は、2016年には、女子差別撤廃条約の実施に関する進捗状況を検討するため同条約第17条に基づき設置された女子差別撤廃委員会から、民法750条を改正するようにとの3度目の勧告もなされていながら、その改正を怠っているのである。
5 岡山弁護士会は、2016年1月13日に、上記平成27年大法廷判決を批判し、選択的夫婦別姓制度の立法化及びこれに伴う戸籍法等の改正を強く求める内容の会長声明を発出した。
同様に、本年4月5日には、岡山県議会において、選択的夫婦別姓制度の法制化に反対する意見書が採択されたことに対し、時代の大きな流れに逆行するものとして、選択的夫婦別姓制度の法制化が早期に実現することを望む旨の会長声明を出したばかりである。
岡山弁護士会としては、この度の最高裁決定を受けて、改めて国に対して、選択的夫婦別姓制度の導入を可及的速やかに行うことを強く求めるものである。
2021年(令和3年)7月15日
岡山弁護士会
会長 則 武 透