「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する 組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
組織的犯罪処罰法改正法案の採決強行に抗議し,同法の廃止を含む見直しを求める会長声明
当会では,今国会において審理されていた組織的犯罪処罰法改正案について,市民の思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性を有し,我が国の刑法の基本原則に反するものであるから成立に強く反対するとの立場から,昨年1月,11月,本年3月と,三度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表し,街頭宣伝活動や市民集会を開催するなど,同法案の危険性について訴えてきた。
同法案の対象となる277の罪の中には,著作権法違反等およそテロ犯罪とは無関係な犯罪が含まれており,対象範囲が広範に過ぎる。また,「組織的犯罪集団」がテロ組織や暴力団等に限定されず,これまで繰り返し述べてきたように市民団体や労働組合等も対象となり得ることから,ひいては一般市民も捜査の対象となり得るという懸念は払拭できない。加えて,同法案に係る衆議院法務委員会での審議において,計画(共謀)よりも前の段階から尾行や監視が可能となることが明らかになるなど,問題点は解消されるに至っていない。
また,同法案が既遂処罰という我が国の刑法の基本原則に反することはこれまでにも繰り返し述べてきたことであるが,既に予備罪が規定されている強盗罪等について,同法案に基づく共謀罪の方がその予備罪よりも法定刑が重いという不均衡が生じる点についてもなんら合理的な説明がない。
同法案については,日本弁護士連合会及び全国52の弁護士会全て並びに刑事法学者ら等からも続々と反対の表明がなされ,国連特別報告者からも「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」として懸念を表明する書簡が内閣総理大臣宛てに送付された。本年6月10日に当会が開催した市民集会及びパレードには約600名の市民が参加し,多くの市民が同法案の内容に疑問を抱いていることが明らかになった。
それにもかかわらず,上述のように十分な議論を経ぬまま衆議院において強行採決し,良識の府であるはずの参議院においても委員会採決を省略した上で採決が強行され,同法案が可決,成立したことは極めて遺憾であり,強く抗議する。
当会は,政府および国会に対し,改めて,同法が国民の重要な権利を侵害し,我が国の刑法の基本原則に反するものであることから,今後,廃止を含めた抜本的見直しを行うよう強く求めるものである。
2017年(平成29年)6月15日
会長 大 土 弘