臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明
2017(平成29)年6月22日,野党所属議員らは森友学園及び加計学園と安倍晋三内閣総理大臣の関係についての疑惑解明を目的とした臨時国会の召集を求める要求書を内閣に提出した。
ところが,安倍内閣は3か月余りこれを放置してきた。そのうえ,2017(平成29)年9月28日,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散した。
憲法53条後段は,臨時国会の召集に関し,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない。」と定めている。この規定の趣旨は,議院内閣制のもとで,国会内の少数派が内閣に対して臨時国会の召集を義務付けることにより,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を保障し,民主主義を徹底しようとする点にある。
したがって,国会法には召集要求があった際の召集期間に関する規定が存在していないところであるが,臨時国会召集のための事務手続に要する期間を考慮しても,内閣は速やかに臨時国会を召集し,要求のあった案件について国会審議がなされるべきである。
今回,「総議員の4分の1」という要件を満たした召集要求があったにもかかわらず,安倍内閣が3か月以上これを放置したあげく,臨時国会を召集したその冒頭に衆議院を解散したことは,議院内閣制のもとで少数派に保障された臨時国会召集要求権をないがしろにし,少数派の提起する案件について国会で議論する機会を奪うものであるから,憲法53条後段の趣旨を実質的に没却することは明らかである。
安倍内閣は,2015(平成27)年にも,野党所属議員らからの臨時国会の召集要求に応じなかった。以上のような安倍内閣の態度は,国会において多種多様な観点から議論を行うという民主主義の根本原理に反し,許されない。
したがって,当会は,内閣に対し,臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求めるとともに,国会に対し,憲法53条後段に基づく召集要求があった場合の召集手続に関する国会法の整備を行うよう求める。
2017(平成29)年11月7日
会長 大 土 弘