死刑執行に関する会長声明
2016年(平成28年)11月11日、福岡拘置所において、1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
さらに、日弁連は、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
当会においても本年9月10日にシンポジウム「徹底討論、死刑。―考え悩む世論―」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
しかしながら、我が国においては、国際社会の趨勢に反し、当会及び日弁連の度重なる要請にもかかわらず、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑の執行を停止した上で、2020年(平成32年)までに、死刑制度の廃止を目指すことを要請するものである。
2016年(平成28年)12月1日