(2020.06.12)検察官の勤務延長に関する閣議決定の撤回及び 検察庁法改正案の廃案を求める会長声明
1,2020年1月31日,政府は,検察官について国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3の勤務延長制度の適用対象から外すとしてきた従来の解釈を変更し,定年退官が予定されていた東京高等検察庁検事長の任期を本年8月7日まで延長する閣議決定を行った(以下「本閣議決定」という。)。
2,これまで,国公法第81条の3第1項は検察官に適用されていないとされてきた。検察官は強大な捜査権を有し,起訴権限を独占する立場にあって,準司法的作用を有していることから,検察官の政治的な中立性と独立性を確保しなければならないからである。
憲法の基本原理である三権分立に基礎を置くものである。定年及び定年延長を導入する国公法改正案が審議された1981年の衆議院内閣委員会において,当時の人事院事務総局任用局長も,検察官には定年及び定年延長の適用はないと答弁していた。
本年4月3日付け当会会長声明でも述べたが,本閣議決定は,国公法及び検察庁法の解釈の範囲を逸脱するもので,解釈によって法律を変更するものであって立法権を侵害し,憲法の基本原理である三権分立に反する。
憲法の基本原理である三権分立に基礎を置くものである。定年及び定年延長を導入する国公法改正案が審議された1981年の衆議院内閣委員会において,当時の人事院事務総局任用局長も,検察官には定年及び定年延長の適用はないと答弁していた。
本年4月3日付け当会会長声明でも述べたが,本閣議決定は,国公法及び検察庁法の解釈の範囲を逸脱するもので,解釈によって法律を変更するものであって立法権を侵害し,憲法の基本原理である三権分立に反する。
3,ところが,政府は,本閣議決定を撤回しないばかりか,本年3月13日,すべての検察官の定年を63歳から65歳に引き上げるとともに,原則として63歳になった時点で検事正以上の役職には就任できないとしつつ,内閣又は法務大臣の裁量で63歳の役職定年の延長や,65歳以降の勤務延長を可能とする検察庁法改正案(以下「本改正案」という。)を,公務員の定年延長を内容とする国公法改正案と抱き合わせで通常国会に提出した。
本改正案は,本年4月3日付会長声明でも述べたとおり,内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入することを可能とするものであり,検察官の政治的中立性と独立性を脅かす危険があまりにも大きく,憲法の基本原理である三権分立に反する。このような改正案のもとでは、検察官に対する国民の信頼をも失いかねず決して容認できるものではない。
本改正案は,本年4月3日付会長声明でも述べたとおり,内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入することを可能とするものであり,検察官の政治的中立性と独立性を脅かす危険があまりにも大きく,憲法の基本原理である三権分立に反する。このような改正案のもとでは、検察官に対する国民の信頼をも失いかねず決して容認できるものではない。
4,本改正案については問題点があまりに大きいため,日本弁護士連合会及び全国の単位会や検察官OBらを含む多くの国民が反対意見を表明するに至った。
これを受けて政府は,本年5月18日,本改正案と国家公務員の定年延長を内容とする国公法改正案について今国会での成立を断念したが,本改正案自体は継続審議することを表明している。
しかしながら,上記のとおり,本改正案については憲法の基本原理たる三権分立に反するものである以上,成立させるべきではない。
これを受けて政府は,本年5月18日,本改正案と国家公務員の定年延長を内容とする国公法改正案について今国会での成立を断念したが,本改正案自体は継続審議することを表明している。
しかしながら,上記のとおり,本改正案については憲法の基本原理たる三権分立に反するものである以上,成立させるべきではない。
5,したがって,改めて本閣議決定の撤回を求めるとともに,本改正案について廃案とすることを求める。
2020(令和2)年6月12日
岡山弁護士会
会長 猪 木 健 二