死刑執行に関する会長声明
2018年(平成30年)12月27日、大阪拘置所において、2名の死刑確定者に対し、死刑が執行された。
今回の執行は、2018年(平成30年)10月に山下貴司法務大臣が就任してから初めての執行であり、第二次安倍内閣以降、合計36名の執行がなされたことになる。
今回執行された死刑確定者のうち1名は量刑等に関して再審請求中であった。これは、再審請求について裁判所の判断を待たずに、法務省が死刑執行をしたことになる。
死刑は生命を剥奪する刑罰であり、誤判の場合、事後的な回復が不可能である。過去に、いったん死刑が確定しながら、再審開始を経て無罪が確定した事件が4件も存することは、誤判・えん罪の危険性が具体的現実的に存在することを示しており、誤った死刑が執行されるおそれが否定できないことは、これまでの複数の再審開始決定から明らかである。
当会は、死刑制度廃止の実現に向けてどのような活動を行うべきかについて議論を重ねるとともに、市民とともに死刑制度の問題点を検討し、死刑制度について全社会的議論を呼びかけ、死刑制度廃止の実現に向けた取り組みを進めている。
また、日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日の第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。この宣言は、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度を廃止し、それと共に、死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑の導入を検討すること等を政府に対して求めたものである。
さらには、国際社会においては、死刑を廃止し又は死刑の執行を事実上停止している国が142カ国に上っているのに対し、死刑存置国は56カ国であり、先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国に限れば、死刑制度存置国は日本、韓国及び米国のみ(ただし、韓国は事実上の廃止国)であり、国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。
我が国は、国連自由権規約委員会や国連拷問禁止委員会等の国際機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告等を受けている。
死刑は基本的人権の核をなす生命を剥奪する刑罰であり、国家による重大かつ深刻な人権制限であって、前記のような国際社会の潮流に反し、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾である。
当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議の意思を表明するとともに、死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを要請する。
2019年(平成31年)2月13日
岡山弁護士会
会長 安 田 寛