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最低賃金の大幅引上げを求める会長声明
2018.07.17
最低賃金の大幅引上げを求める会長声明
 
1.
 中央最低賃金審議会は,本年7月頃,厚生労働大臣に対し,本年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。例年,各地域の地方最低賃金審議会は,この目安を参考として,地域別最低賃金額を各労働局長へ答申し,その答申を受けて労働局長が具体的金額を決定する。
 昨年,岡山労働局長は,岡山地方最低賃金審議会の答申を受け,地域別最低賃金額を1時間あたり781円とする決定を行なっている。
 しかしながら,以下に述べるとおり,労働者の生活の安定という観点からは,1時間あたり781円という水準は,未だ余りに低過ぎるものと言わざるを得ない。

2.
 最低賃金制度の目的は,賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もって,労働者の生活の安定,労働力の質的向上等を図ることにある(最低賃金法第1条)。
 しかし,1時間あたり781円という水準では,フルタイム(1日8時間,週40時間,年間52週)で働いても,月収は13万5373円(年収は162万4480円)に留まる。現時点の我が国の社会状況に鑑みた場合,同金額をもってしては,各種の給付の存在を考慮したとしてもなお,一人で生計を維持することは極めて困難と言わざるを得ない。ましてや子どもを生み育てていくことは,およそ不可能である。最低賃金制度は,上記のとおり,「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」を目的としているが,上記のような金額では,労働者が経済的に安定した生活を送ることは困難である。また,労働者の生活の不安定は,労働者の労働能率の減退を招き,労働力の質的向上とは逆に質的低下を招来する。上記金額では,法の目的を達成するに足りる水準に達しているとは言えない。

3.
 今日の日本では,正社員として働く労働者の人口は減少し,非正社員の割合が増加し続け,現在では役員を除く雇用者全体の約37パーセントに至っている。その内訳として,25歳から54歳までの割合が約半数を占めるに至っている。その結果,主に自らの収入で家計を維持する非正社員の割合が増加し,最低賃金は,家計補助的な働き方をする労働者の問題ではなくなっている。最低賃金が上記のような金額に留まるのであれば,フルタイムで働いていても安定した生活を送ることができないワーキングプアの問題がより深刻化することは明らかである。ワーキングプアの問題は格差の拡大を加速させ,それと同時に国民の労働意欲を減退させるものである。
 このような格差の拡大,国民の労働意欲の低下は,ひいては国民経済の健全な発展を妨げるものであり,国民全体の利益の観点からも解決を急がなくてはならない問題である。

4.
 昨年度岡山労働局長が決定した1時間あたり781円という最低賃金の基準が著しく低い基準であるということは,先進諸外国の最低賃金との比較からも一目瞭然である。例えば,オーストラリアの最低賃金は18.93豪ドル(約1599円),フランスの最低賃金は9.88ユーロ(約1282円),ドイツの最低賃金は8.84ユーロ(約1147円),イギリスの最低賃金は7.83ポンド(25歳以上,約1157円)であり,日本円に換算するといずれも1000円を超えている(円換算は2018年6月上旬の為替レートで計算。)。

5.
 この点,政府は,2010年(平成22年)6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年(平成32年)までに最低賃金を「全国最低800円,全国平均1000円」にするという目標を明記している。
 この政府の目標は,引き続き継続し必ず達成しなければならない。更に,全国最低と全国平均の2段階の目標を設けていることについては,同一労働同一賃金の原則に照らし妥当とは考え難いため,全国一律1000円を目標とすべきである。
 現在の最低賃金法では地域別最低賃金制度が採用されているため,2017年(平成29年)地域別最低賃金では,最も高い東京都では958円,最も低い沖縄県など7県では737円となっており,221円もの賃金格差が発生している。
 岡山県でも,隣接する広島県とは37円,同じく兵庫県とは63円もの格差がある。1日8時間,1か月22日間働くとすると,1か月分の賃金格差は,広島県との間で6512円,兵庫県との間で1万1088円にもなる。
このような賃金格差は,年々拡大している。2007年度(平成19年度)の最低賃金は,岡山県が658円であったところ,広島県は669円(11円差),兵庫県は697円(39円差)であった。
 この事態を放置すれば,今後,さらに賃金格差が拡大し,県境地区では岡山県外に労働力が流出する事態につながりかねない。本来,同一労働同一賃金の原則からすれば,地域別最低賃金ではなく,全国一律の最低賃金制度を創設すべきである。

6.
 以上から,岡山労働局長は,地域間の最低賃金格差を是正すべく,最低賃金を全国加重平均(2017年度(平成29年度)で848円)の水準に引き上げるべきである。そして,政府目標の全国平均1000円の数値を残された3年間で達成するためには,1年あたり73円以上の引上げが必要である。
 当会は,2017年(平成29年)12月6日にも最低賃金の大幅引上げを求める会長声明を発出したが,引き続き労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を図るため,岡山地方最低賃金審議会に対して,本年度の岡山県における地域別最低賃金額について73円以上の引上げを答申すること,及び岡山労働局長に対して,1時間あたりの地域別最低賃金額を本年度より73円以上引上げ854円以上に決定することを求める。
 
2018年(平成30年)7月17日
 
岡山弁護士会     
会長 安 田   寛
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