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民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
2017.11.07
民法の成年年齢引下げに反対する会長声明

第1 はじめに
 現在,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正法案の立案作業が進められている。
 しかし,次の理由から,民法の成年年齢を引き下げることに反対する。

第2 成年年齢引下げによる弊害は大きい
 1.未成年者取消権の喪失による消費者被害の拡大
   (1)民法は,未成年者が,親権者の同意なく単独で行った法律行為につき,取消権を認めている(民法第5条
   第2項)。この未成年者取消権が認められた趣旨は,社会経験が乏しく判断能力が未熟な未成年者を保護する
   ためである。
    若年者は,社会経験の乏しさや判断能力の未熟さから,違法・不当な契約の勧誘に脆弱な面があること
   から,様々な消費者被害が発生している。
    また,若年者は,学校等における先輩後輩関係や友人関係等の影響を受けやすく,そういった人間関係
   から被害が拡大しやすい。さらに,被害に遭ったときに適切な対応ができないため問題を抱え込んでしま
   うことも少なくない。
    そのため,未成年者取消権は,未成年者保護のために重要である。
   (2)未成年者取消権は,未成年者に対する違法・不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止
   力としての機能も有している。
    未成年者取消権が抑止力として機能していることは,全国の消費生活センター等に寄せられる相談件数
   が,18歳から19歳までの平均値と20歳から22歳までの平均値を比較すると,20歳から22
   歳までの平均値が18歳から19歳までの平均値の約1.55倍と増えていること(平成27年度)か
   らも推認できる。
    すなわち,悪質な業者は,未成年者取消権を失った直後の若者を狙って勧誘をしているために,20歳
   を境に相談件数が増加していると考えられる。そのため,未成年者が18歳に引き下げられれば,18歳
   を境に消費者被害が増加すると考えられる。
    さらに,18歳及び19歳の若年者は,20歳を超えた若年者と比較して,より社会経験に乏しく判断
   能力が未熟であるため,消費者被害が拡大することが容易に予想できる。
  (3)このように,成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者が未成年者取消権を行使できなく
   なる結果,消費者被害が拡大することが懸念される。
 2.労働契約の解除権の喪失に伴う労働者被害の拡大
    労働基準法第58条2項は,「親権者若しくは後見人又は行政官庁は,労働契約が未成年者に不利であ
   ると認める場合においては,将来に向ってこれを解除することができる」と規定し,未成年者の労働契約
   について,未成年者にとって不利な労働契約の解除権を認めている。
    民法の成年年齢を引き下げた場合,18歳及び19歳の若年者は,民法の未成年者取消権による保護だ
   けではなく,労働基準法第58条第2項の解除権による保護も受けられなくなる可能性が高く,解除権に
   よる抑止力が働かなくなる結果,労働条件の劣悪ないわゆるブラック企業等による労働者被害が18歳及
   び19歳の若年者の間で一気に拡大する可能性がある。
 3.若年者の消費者被害拡大のおそれに対する対策が不十分である
  (1)法制審議会「民法の成年年齢引下げについての最終報告書」(以下「最終報告書」という。)は民法
    の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとの結論を出している。ただし,最終報告書も,成年年
    齢の引下げのためには,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現される必要が
    あるとの留保をつけている。
     しかし,次のとおり,消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策は実現していないこと
    からも,成年年齢を引き下げるべきではない。
  (2)最終報告書においても,若年者の社会的経験の乏しさによる判断力の不足に乗じて取引が行われた場合
    (以下「『つけ込み型』勧誘の類型」という。)に,契約を取り消すことができるようにする等の施策の
    充実を図る必要があるとされた。
     また,平成29年8月8日付の「消費者委員会答申書」においても,「つけ込み型」勧誘の類型につい
    ての消費者の取消権につき,早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題とされている。
     しかし,平成29年8月21日,消費者庁により,消費者契約法の見直しに関する意見公募手続が実施
    されたが,その意見募集対象である消費者契約法の改正に関する規定案には,「つけ込み型」勧誘の類型
    について,取消権を認める等の規定案は含まれていない。そのため,次回の消費者契約法改正において,
    「つけ込み型」勧誘の類型について,消費者の保護の規定が追加される可能性は低い。
  (3)このように,若年者の消費者被害拡大のおそれを防ぐための施策がなされているとはいえない状況であ
    る。

第3 まとめ
    以上のとおり,民法の成年年齢の引下げにより,18歳及び19歳の若年者への消費者被害を拡大させ,
   また,労働者として搾取される等の被害を増加させるおそれが高いことから,当会は,民法の成年年齢の
   引下げに反対する。

2017(平成29)年11月7日

岡山弁護士会     
会長  大 土  弘

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