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修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の成立にあたっての会長声明
2017.05.10
修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法の
成立にあたっての会長声明

 

1 はじめに

 本年4月19日、司法修習生に対して修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法(以下、「本法」という。)が成立した。本法の施行日である本年11月1日以降の司法修習生に対しては本法67条の2に基づき、基本給付金として一律月額13万5000円、さらに必要に応じて住居給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給される見込みとなった。
 給費制の実現に向けては、日本弁護士連合会及び各弁護士会が、法曹志望者・法科大学院生・若手弁護士らを中心とするビギナーズ・ネットや市民の皆様とともに、7年余にわたって活動してきたものであるが、本改正が実現したのは、多くの市民の皆様、国会議員の皆様、法務省をはじめとする関係各省庁及び最高裁判所、マスコミ関係者の方々など、多くの方のご理解とご協力があったからであり、当会として、心から感謝申し上げる。

2 従前の制度

 この修習給付金をめぐっては、2011年(平成23年)の裁判所法改正により、司法修習生に対する給費が廃止され、同年採用の司法修習生以降、司法修習生に対し、月額23万円を標準とする修習資金相当額を貸与する制度(貸与制)が導入された。しかし、貸与金はあくまで司法修習生にとって借入金(債務)にすぎず、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生は、無給での司法修習を強いられてきた。

3 司法修習生の経済状況

 司法修習生は、本法67条2項により修習専念義務が課されたうえ、原則として副業が禁止されていることから、無給となった司法修習生は経済的に非常に困窮し、多くの司法修習生は、国からの修習資金の貸与を受け、司法修習に要する経費及び生活費等を賄ってきた。もっとも、修習資金の貸与を受けるためには年収150万円以上の保証人2人を付けるか、機関保証(有利子)を申し込む必要があったため、保証人を付けられず、かつ、機関保証を申し込んで更に債務が増大することを恐れた司法修習生は、貸与金の申請が行えないといった事態も生じた。加えて、貸与制の下の司法修習生は、司法修習生に採用される以前の法科大学院や大学の奨学金返還債務を抱えていることが多く、約300万円の貸与金返還債務は経済的に非常に重い負担となった。このような経済的負担は、近年の法曹志望者激減の一因ともなった。

4 司法修習の意義

 そもそも、法曹(裁判官・検察官・弁護士)になるには、司法試験合格後、1年間の司法修習を経て、考試(本法67条1項)に合格することが必要である。司法修習は、法曹として実務に必要な能力や高い見識・倫理観等を習得するために必要不可欠なものであり、法曹志願者としては必ず経なければならない制度である。国は、法律上、法曹志願者に対し、1年間の司法修習制度を定め、かつ、司法修習期間においては修習に専念する義務を課しているから、司法修習生の生活を賄うべく公費を投じることは、国の当然の責務といえる。

5 当会の活動

 貸与制は、こうした国の責務を放棄するものであり、当会では、これまで、日本弁護士連合会やビギナーズ・ネットなどとともに、貸与制を廃止し、かつての給費制を実現すべく、地元選出の国会議員との面談、市民集会の開催、司法修習生給費制実現PTの立ち上げ、地元紙における意見広告、マスコミの皆様との意見交換、院内集会への委員の派遣等の活動に取り組んできた。
 この活動が、司法修習生に対する経済的支援の必要性を広く認識していただく一助となり、本法が成立した。

6 法改正の評価

 本法は、司法修習生に対する一律での給付が実現したという点において、これまでの貸与制が誤りであったことを認めたものであり、また、司法修習生の経済的困窮を幾分か和らげるものではある。したがって、当会としても、本法の成立自体について司法修習生に対する経済的支援の前進と評価する。

7 残された課題

 しかしながら、本法は以下の2つの課題を残したといえる。
第一に、給付金額13万5000円という金額は、経済的不安なく司法修習を行うための費用としては必ずしも十分ではない。本法に基づく給付金額については、司法修習の意義及び今後の司法修習の実態も踏まえて、その適正額について引き続き検討が続けられるべきである。
 第二に、本法の成立により、貸与制の下で司法修習を行った2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された司法修習生のみが、無給での司法修習を強いられ、給費制のもとで修習した2010年(平成22年)以前の司法修習生及び修習給付金の支給を受ける本年以降の司法修習生と比較して著しい不公平が生じることとなる。そこで、2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に採用された貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するための措置をとることが必要不可欠である。本法案の審議の過程においても、与野党を問わず国会議員の皆様から同様の指摘がなされ、何らかの措置を講ずべきであるとの意見もあったにもかかわらず、本法にはこの点につき何らの言及もない。
 貸与世代の第1期生である2011年(平成23年)に採用された司法修習生であった者に対する貸与金の返還開始時期である2018年(平成30年)7月が迫ろうとしている。一度貸与金の返還が開始されてしまうと、貸与世代の司法修習生に生じる著しい不公平を解消するために必要な措置をとるに当たり、制度設計上困難な事態が新たに生じてしまうことは明らかであり、上記第二の課題は喫緊の対応が必要である。
 

8 おわりに  

 当会としては、本法の成立をひとまず前進と受け止めるとともに、今後も、上記2つの課題を解決すべく、引き続き活動を続けていく所存である。
 
 
  2017年(平成29年)5月10日
 岡山弁護士会     
会長 大 土   弘
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