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改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2017.03.08
改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
 
1 当会は,この問題に関し,すでに平成27年5月13日付「少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明」を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに対して反対運動を重ねてきた。しかしながら,法務省は,平成28年12月,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合に備えて若年者に対する刑事政策的措置に言及し,さらには法務大臣が少年法の適用年齢の引下げに関して法制審議会へ諮問したことが報道されるなど,少年法の適用年齢の引き下げの動きに向けた動きが進んでいる。
2 現行少年法は,少年の健全育成を目的に掲げて,その適用年齢を20歳未満と定め,全ての少年事件を家庭裁判所に送致したうえ,家庭裁判所及び少年鑑別所による科学的な調査と鑑別を踏まえ,少年に相応しい処遇を決する手続を採用している。かかる現行少年法の手続は,少年院などにおける個別的な指導と教育の処遇と相まって,少年の立ち直りと再犯の防止に有効に機能してきた。
  この長きにわたり有効に機能してきた現行少年法の適用年齢を,いま引き下げる方向で見直さなければならない合理的な理由は存在しない。法律の適用年齢を考えるにあたっては,それぞれの法律の立法趣旨や保護法益に照らし,個別法ごとに慎重かつ具体的に判断すべきであって,国民のわかりやすさや整合性は適用年齢の一律引き下げの理由とはならない。
  この点,民法の成人年齢引下げの議論は,公職選挙法との一致や,若年者の自己決定権を尊重することなどが理由とされている。しかし,これらは刑事手続において,若年者が,自己の権利を適切に行使して防御することが可能かどうか,あるいは今後いかに立ち直り更生することができるか,という場面とは,全く状況を異にするものである。仮に,契約を単独で行うことができることになっても,民法上想定されている通常の取引行為と,国家権力に対する防衛権を行使する必要がある刑事手続とでは,必要とされる知識,判断能力等は質・量ともに格段に異なる。
  したがって,民法上の成年者であっても,社会的・精神的に未熟な18歳・19歳の者に対し,保護主義に基づき,家庭裁判所の後見的な処遇に委ねることには,合理性,必要性がある。
  さらに,満18歳未満への適用年齢が引き下げられた場合,非行少年の多くが立ち直りに向けた十分な指導と処遇を受けられないまま放置されることになりかねない。現行少年法の下では,非行少年は家庭裁判所へ送致された後,家庭裁判所の調査官や少年鑑別所の技官などの専門家が,非行の背景や要因,少年の資質や環境上の問題点等の調査や分析を行い,少年院送致となった場合も,一人一人の少年の状態や問題点を踏まえて指導と教育が行われている。しかしながら,少年犯罪の約5割を占める18歳・19歳の非行少年が,少年法の対象外となった場合には,その多くが初犯であるため,不起訴処分,罰金刑,または執行猶予判決により施設収容されることなく手続を終了し,立ち直りに向けた十分な指導や処遇を受けられない。そもそも,18歳以上の非行少年の多くは,その発達過程で大きな問題を抱えており,成長発達権を保障されなかった子どもたちである。かかる非行少年にこそ,少年に可塑性を踏まえた個別的な指導と教育により,充実した「教化」が必要であり,その結果,非行少年の立ち直りと再犯の防止につながると考えられる。
  加えて,少年犯罪の全体的な傾向は,増加も凶悪化もしていない。少年犯罪の検挙者数は,2004年以降減少を続け,凶悪犯罪も減少・横ばい傾向にあることを考えると,少年法の適用年齢を引き下げることによって,犯罪抑止効果が得られるということにはならない。
  なお,法務省が発表した「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書に記載されている若年成人層に対する刑事政策のあり方と少年法適用年齢の引下げに関する議論とは問題の所在を異にするため,区別してなされるべきである。若年成人層に関する刑事政策のあり方は,個別の問題点や必要性等から議論をつくし,慎重に判断されるべき事柄である。
3 以上のように,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるという議論は,少年の立ち直りを阻害しかねないものであって少年法の立法趣旨に反し,かつ,合理的な立法事実にも基づかないものである。
  したがって,当会は,少年法の適用年齢を18歳未満まで引き下げることに改めて強く反対する。
 
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会        
会長 水 田 美由紀
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