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女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項の一部について憲法違反とする最高裁判所大法廷判決に関する会長声明
2016.01.13
女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項の一部について憲法違反とする最高裁判所大法廷判決に関する会長声明
 
 2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は、女性にのみ6か月の再婚禁止期間を設ける民法第733条第1項につき、「本件規定の立法目的は、女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある」、「女性の再婚後に生まれる子については、計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる」、「本件規定のうち100日超過部分については、民法第772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはでき」ず、「婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるもの」として、憲法第14条第1項、第24条第2項に違反すると判示し、明確な一部違憲判断を下した。
 民法第733条第1項については、従前より父性推定の重複回避のためであれば再婚禁止期間は100日で十分と指摘されており、1996年(平成8年)2月26日、法務大臣の諮問を受けた法制審議会は、女性の再婚禁止期間を100日に短縮する民法の一部を改正する法律案要綱を決定していたが、現在に至るまで同改正はなされていない。
 しかし、欧米諸国では、女性の再婚禁止期間規定について、同期間の短縮にとどまらず、同規定自体を既に廃止しており、近隣国でも、中国には再婚禁止期間規定が元々なく、韓国は2005年(平成17年)3月これを廃止している。そして、国連自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会は、日本政府に対して、再婚禁止期間に関する民法規定の改正、廃止を求めており、日本弁護士連合会も、民法第733条第1項の速やかな改正を強く求めてきた。
 今回の最高裁判所大法廷判決は、女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項について100日を超える部分を違憲としており、女性の婚姻の自由を従来より広く認めたという限りにおいては肯定的に評価できる。
 しかし、婚姻及び家族に関する事項について、国会に合理的立法裁量が認められるとしても、憲法第24条第2項に規定するとおり、法律は両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないのであって、なお100日に限り女性の再婚禁止期間を認め、その婚姻の自由を制限する今回の最高裁判所大法廷判決は不十分といわざるを得ない。上で述べたように、両性の本質的平等の理念に基づき国際的に女性の再婚禁止期間規定そのものが廃止される大勢にあり、わが国が批准した女性差別撤廃条約が締結国に対して、女性差別となる既存の法律を廃止するための立法措置を求めている以上、女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項そのものが違憲として廃止されるべきである。
 ところで、同条項そのものが廃止された場合、父性推定が重複する100日間に婚姻することにより父性を判定できなくなる場面が増大することを懸念する意見も考えられるが、現在ではDNA鑑定の進歩によりほぼ100%の確率で生物学上の親子関係を判断できるため父性の判定を誤るおそれはなく、問題はない。これら諸事情に鑑みれば、女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項を廃止することによって発生し得る問題は、父性推定が重複する場合は後婚の夫の子と推定し、この推定は親子関係不存在確認の訴えにより覆しうるものとするなどの父性推定規定の改正という立法措置で対処すべきである。
 今回の最高裁判所大法廷の判決は、憲法上の要請ではない父性推定の重複回避を、憲法上の要請である女性の婚姻の自由に優先させるような判断であり、間違っている。最高裁判所大法廷は、さらに踏み込んで、女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項そのものを憲法違反とする判断を行い、かつ、1996年(平成8年)の法制審議会による民法の一部改正法律案要綱決定後、20年間にわたり改正を放置してきた国会の立法不作為を認めるべきであった。
 以上のとおり、女性の再婚禁止期間規定の廃止は、両性の本質的平等という憲法上の要請であることから、岡山弁護士会は、国会及び内閣に対して、今回の最高裁判所大法廷判決が事実上求める100日を超える部分の改正というような技術的対応ではなく、女性の再婚禁止期間を定めた民法第733条第1項そのものの廃止及び父性の推定規定の改正という男女平等の理念に即した抜本的解決を強く求めるものである。
 
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会     
 会長 吉 岡 康 祐
 
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