新着情報

ホーム新着情報 > 生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明
全体イベント・相談会意見表明
生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明
2015.06.10
生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明
 
 厚生労働省は、平成27年1月15日、平成27年度から生活保護の住宅扶助基準と冬季加算を引き下げるとの方針を発表し、同年3月9日、同省社会・援護局関係主管課長会議において、その具体的指針を現場に示した。この引下げにより、住宅扶助基準は平成27年7月から3年間にわたって総額約190億円、冬季加算は、平成27年度で30億円もの大幅な減額が行われようとしている。
 これらの引下げに先行し、厚生労働省は平成25年1月、生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費を賄う生活扶助基準について、3年間で総額670億円を減額すると発表し、実際に、平成25年8月、平成26年4月、平成27年4月の3度にわたり生活扶助の基準額を引き下げている。これに対して、日本弁護士連合会や当会を含む各弁護士会は、かかる一連の引下げは、最低限度の生活を保障する憲法25条に違反するとして強く反対する声明を繰り返し発してきた。同時に、生活保護受給者の最低限度の生活を行う権利が侵害されたとして、岡山をはじめ全国各地で減額処分の取消しを求める裁判が相次いで提起されている。
 政府は、平成18年6月に施行された住生活基本法に基づき、平成23年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定し、「最低居住面積水準」を定めた。この最低居住面積水準とは、「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」であり、「単身者25平方メートル」「2人以上の世帯10平方メートル×世帯人数+10平方メートル」等と定められ、これらの水準未満の住宅については「早期に解消」するべきと決定された。この最低居住面積水準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な生活」を住生活の面において数値化したものであり、「健康で文化的な生活」の具体化立法である生活保護法の実施にあたっても当然に守られなければならない。さらに、厚生労働省の諮問機関である生活保護基準部会は、生活保護受給世帯が居住する民営借家における最低居住面積水準の達成率に関して、一般世帯においては、単身世帯で76%、2人以上世帯で86%に対して、生活保護受給世帯においては、単身世帯で46%、2人以上世帯で67%と、生活保護受給世帯の水準は一般世帯に対してこれを大きく下回っているため、より適切な住環境を確保する方策が必要と指摘した(平成27年1月生活保護基準部会作成の報告書)。
 しかし、厚生労働省は、今回の引下げに際して、この生活保護受給世帯の最低居住面積水準の実情を無視する姿勢を明確にし、住家賃物価の動向(全国平均△2.1%)を住宅扶助基準へ反映させることなどを理由に、住宅扶助基準の引下げを強行しようとしている。また、従前2人世帯の住宅扶助は単身世帯の1.3倍とされていたところを、今回の方針では1.2倍に引き下げるとしたため、単身世帯の住宅扶助基準が引き下げられた地域では、2人世帯の基準も大きく引き下げられる結果となった。しかも、生活保護受給世帯の住宅扶助の実績額(平均)は37,088円(2人以上の世帯)であって、一般低所得世帯(年収下位10%世帯、生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれる)の平均家賃額38,123円と比べても、なお低く、生活保護受給世帯が不当に優遇されているという実態はない。
 また、冬季加算とは、冬季に暖房費などの出費のため、11月から3月までの期間、生活扶助基準に加えて、地域別、世帯人数別に定められた額を支給する制度である。上述の生活保護基準部会報告書では、季節要因等によって変動する現実の冬季増加費用が、冬季加算額によって実際に賄えるかを検証する必要があるなどと指摘した。しかしながら、厚生労働省の方針は、この指摘を無視したまま、11月から3月の一般低所得世帯における冬季増加費用と生活保護受給世帯の冬季増加費用を単純に比較するなどして、ほとんどの地域・世帯において冬季加算額を引き下げることを決めている。しかし、そもそも一般低所得世帯には生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれていることから、単純に比較すること自体きわめて不合理である。
 これまでの3度にわたる生活扶助基準の引下げに加えて、今回の住宅扶助基準や冬季加算の引下げが実施された場合、生活保護受給世帯は、生活費の切り詰めや、家賃滞納で住宅の明け渡しを求められる等の危険が生じ、特に子どものいる多人数世帯の生活の場が不安定になることが懸念される。また、冬季加算の引下げは、平年以上に厳冬になった場合などは、寒冷地のみならず温暖地においてすら生命や身体への深刻な影響を招きかねない。
 以上のとおり、今回の住宅扶助基準と冬季加算の引下げは、生活保護基準部会の専門的知見との整合性を欠くなどの点において、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用する点で生活保護法8条2項に違反し、同時に、生存権を保障する憲法25条にも違反するものであり、当会は、政府がこれらの引下げ方針を撤回するように、また、衆参両院に対しては、かかる厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用行為を厳しく監視するように、強く求める。
 
2015(平成27)年6月10日
岡山弁護士会     
 会長 吉 岡 康 祐
PAGETOPへ
-