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「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2014.11.12
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
 
1 政府は,本年9月29日,国会に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下,「改正案」という。) を提出している。
 改正案は,本年3月11日に通常国会に提出された同名の法案(以下,「前回改正案」という。)と,内容をほぼ同一にするものである。当会は,本年4月22日付けで「「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明」を発表し,前回改正案が労働者派遣法の根本原則である常用代替防止原則(派遣先の常用労働が臨時的・一時的労働である派遣労働に取って代わられることを防止する原則)を実質的に放棄しており,企業が業務の種類を問わず派遣労働者を永続的に利用できることになる結果,常用労働者から派遣労働者への代替が促されて,不安定雇用の増加と労働条件の劣悪化を招くこととなる可能性が高いことを指摘し,前回改正案に強い反対の意見を表明してきた。
 しかしながら,改正案では,前回改正案中にあった誤記(特定派遣事業の廃止に伴う罰則規定の法定刑を「1年以下の懲役」とすべきところを「1年以上の懲役」としていた)を訂正しただけで,常用代替防止の対策が全く講じられていない。
2 労働者派遣法は,制定当時から,常用代替防止原則を採用し,派遣を臨時的・一時的な場合に限定するとともに派遣期間を制限してきた。そもそも,労働者派遣事業は,近代社会において私的職業紹介事業が中間搾取や劣悪な労働関係への誘導といった様々な社会問題を誘発したという歴史の教訓を踏まえて,職業安定法第44条が禁止する労働者供給事業の一種として,戦後一貫して禁止されていた。労働者派遣法は、常用代替防止原則を採用し、専門業務に限定することによって,はじめて1985年(昭和60年)にあくまでも例外的なものとして成立したのである。その後,1999年(平成11年)にネガティブリスト方式を採用して労働者派遣事業の適用対象業務を原則自由化する際にも,常用代替防止原則を採用して臨時的・一時的な場合に限定するとともに派遣期間を制限した。
 しかしながら,改正案においては,派遣期間の定めのない無期雇用派遣を認めている。加えて,有期雇用派遣の場合であっても,組織単位の派遣期間制限の場合には派遣労働者を入れ替えれば事実上無期限に派遣労働者を受け入れることが可能となり,事業所単位の派遣期間制限の場合にも継続利用事業所が過半数労働組合又は過半数代表者の意見聴取さえ行えば事実上無期限に派遣受け入れ期間を延期できることになる。
 さらに,改正案は,派遣先の直接雇用義務をも縮小させ,無期雇用派遣労働者に対する派遣先の雇用義務をすべて削除した上,労働契約申込みなし制度の適用からも除外している。有期雇用派遣労働者に対しても,制限期間を超えて派遣労働者を使用しようとする場合の派遣先の労働契約申込義務を定めた現行法第40条の4を廃止し,直接雇用努力義務規定にとどめている。
 このように,改正案は,無期限の派遣利用を認めており,かつ,派遣先の直接雇用義務を縮小させているのであり,常用代替防止原則を実質的に放棄しているのである。このような改正がなされれば,かつて行われていたように労働者が低賃金・不安定の劣悪な労働関係のもとでの労働を強いられ,ひいては憲法25条の保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害することとなりかねない。
3 内閣府は,本年6月24日付けで閣議決定した「日本再興戦略」改訂2014において,女性の更なる活躍促進を掲げている。
 平成24年版「働く女性の実情」(厚生労働省発表)によると,女性の年齢階級別労働力率はいまだM字型カーブを描いており,「継続就業を希望しながらも出産・育児等により離職を余儀なくされている者も多」いことが指摘されている。女性が社会で継続的に活躍するためには,安定的な雇用形態での社会進出が求められるところである。
 しかしながら,右発表によると,女性の雇用者数は2011(平成23)年度に比較して2012(平成24)年度には増加していたものの,雇用形態別の増加率は,「非正規の職員・従業員」(6万人増)が「正規の職員・従業員」(2万人増)の約3倍にものぼっていた。そして,同年度の女性の雇用形態別構成比は,「正規の職員・従業員」が45.5%であったのに対し,「非正規の職員・従業員」が54.4%にものぼっていた。男性の雇用形態別構成比が「正規の職員・従業員」が80.3%,「非正規の職員・従業員」が19.7%であったことと比べると,女性が非正規の不安定な労働関係を強いられていることがわかる。
 また,「平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」(厚生労働省発表)によると,派遣労働者のうちの男女比は,2007(平成19)年度には男性48.6%に対し女性51.4%であったところ,2010(平成22)年度には男性43.1%に対し女性56.9%となっており,派遣労働者のうち女性が占める割合が急増していることがわかる。
 改正案によって派遣労働者の常用代替がもたらされると,その結果,現状においてすでに派遣労働者の大半を占めている女性の雇用形態の不安定化がより一層促進され,女性の活躍が阻害されることとなる。その意味において,改正案は政府自らが掲げる「日本再興戦略」の女性の更なる活躍促進との方針と矛盾するものである。
4 以上の通り,改正案は,常用代替防止の理念を実質的に放棄するものであり,不安定雇用の増加及び労働条件の劣悪化をもたらすこととなる可能性が高い。そして,内閣府の「日本再興戦略」の方針とも矛盾する。さらには、改正案によって派遣労働の常用代替化が進めば,雇用の不安定化と低賃金化がもたらされ,現在でも苦しい生活を強いられている貧困層の益々の貧困化につながり,「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法第25条)を侵害することになる。
 よって,当会は,改正案に強く反対するとともに,派遣労働者の雇用安定を確保し,常用代替防止に立ち返った労働者派遣法改正を行うよう再度強く求めるものである。
 
平成26年(2014年)11月12日
                          岡山弁護士会       
                           会長 佐々木 浩 史
 
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