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裁判所予算の増額を求める会長声明
2014.10.22
裁判所予算の増額を求める会長声明

声明の趣旨
 最高裁判所は大幅な裁判所予算の増額を要求すべきであり、政府・財務省はそれを受けて裁判所予算を大幅に増額させるべきである。
声明の理由
1 紛争を解決し、権利侵害を救済し、違法な行為から身体や財産を守るのが司法の使命であり役割である。
 このような観点から、司法制度改革審議会意見書(平成13年)は、司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について特段の配慮を求めた。
 また、「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年)は、裁判を迅速に行い、司法を通じて権利利益が実現できるよう、政府に財政面も含めた措置を講じる責務を課した。
 また、最高裁判所による裁判の迅速化に係る検証に関する報告書でも、「裁判所の基盤整備を含めた体勢面の施策も着実に実現していく必要がある」と指摘されている。
2 しかるに、裁判所予算の現状と推移は、近年、非常に憂慮すべき状況にある。
 裁判所予算は平成8年度に3000億円を超え、平成18年度に約3331億円に達したが、それを頂点として7年連続で減少し、平成25年度予算では3000億円を割り込み、18年前の平成7年度の水準にまで落ち込んだ。
 平成26年度予算額は前年度比約122億円増加して約3110億円となったが、給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円を含んでいるので、実質的には前年度比約49億円の減額となっている。しかも平成27年度の概算要求額は平成26年度予算額より1.5億円減少した。
  また、裁判所予算が一般会計予算に占める割合は、平成20年度まで0.4%前後(司法の重要性の観点からはこの予算比自体が非常に少ないが)で推移していたが、平成21年度から低下し、平成25、26年度予算では約0.32%にまで落ち込んだ。
 このような事態は、前記司法制度改革審議会意見書が求めた「財政上の特段の配慮」や、「迅速化法」が定める「措置を講じる責務」が怠られてきたことを意味している。
3 予算関係文書を子細に検討すれば、さらに憂慮すべき事情が明らかになる。
(1) 裁判官の報酬を含む人件費が大幅に減少している。最高裁判所及び 下級裁判所の人件費に該当すると思われる各科目(委員手当、退職手当を除く)の合計額は、平成24年度1900億円余から平成25年度1800億円弱へと約7.2%減少した。平成26年度予算額は約1980億円であるが、前記の給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円が含まれるので、実質的に平成24年度の水準には及ばない。
(2) IT化関連予算が大幅に減少している。最高裁判所及び下級裁判所の「情報処理業務庁費」の合計額は、平成24年度約15億円から、平成25年度5億円余へと、前年度比約64%も急減した。平成26年度予算では約7.3億円まで回復したが、平成27年度概算要求では約3.6億円と半減した。社会においてIT化の流れが定着し発展を続けている状況を考えれば、かかる予算の減少は、裁判所におけるIT化対応への意欲の欠落を如実に示していると言わざるを得ない。
(3) 概算要求書によれば、裁判所予算中の「経常的広報経費」の額は平成22年度(約490万円)以降おおむね減少傾向にあり、平成26年度予算額は約454万円、平成27年度概算要求額は約336万円である。もともと非常に少額な広報経費が、年々減少していっているのである。このことは例えば、平成25年に家事事件手続法が施行されて家事事件手続が全面的に変化したにもかかわらず、裁判所は手続利用者である国民に向けて広報(すなわち情報発信)を十分に行えないことを意味している。
   これでは、裁判所が裁判制度や裁判所の業務を広く市民に知らせることが不可能である。
4 こうした裁判所予算の不足は、司法機能に看過できない悪影響を及ぼしている。中でも最大の弊害を生じさせているのが、裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足である。
(1)裁判官の勤務の過酷さは以前から異常な状態にあり、書記官をはじめ裁判官以外の職員の繁忙も激化の一途をたどっている。にもかかわらず、家庭裁判所以外の裁判所予算は総じて減少傾向にある。
(2)家庭裁判所は、近年の家事事件の増加と複雑化のため、繁忙が甚だしい。裁判官・書記官は多忙をきわめ、本来自ら行うべき申立内容の確認や後見業務の打合せなどを参与員に依存せざるを得ない状況となっている。
(3) 全国の各地に存在する裁判官非常駐支部は、いっこうに解消されず、支部での手続の遅れや不都合を生じている。
(4) 労働審判は、労働事件を簡易迅速に解決することを趣旨として創設 された制度で、利用件数が増加しているが、裁判所支部では立川・小倉を除き実施されていない。制度の本旨から国民の身近な裁判所で行われるべきなのに支部で実施されないのは、実施に必要な裁判官・書記官のマンパワーが、予算不足からくる人員不足のために不足しているからである。全国の弁護士会が裁判所に対し度々支部での労働審判実施を求めているが、ほとんど実現していない。
(5) 他にも、(1)勾留請求を受けて裁判官が勾留質問を行い判断するまでに時間がかかることが増えていること、(2)簡易裁判所民事事件の和解の大半が司法委員任せで裁判官が臨席しないこと、(3)簡易裁判所等を統廃合した際、代替措置として実施されることになった出張事件処理の利用促進がなされていないこと、(4)民事事件等において、現場検証などで裁判官が現地に赴くことが減少していることなど、裁判所の人員不足に起因する弊害はきわめて多い。
(6) 裁判官の人数が少ないために個々の裁判官の負担が過重となり、一 つ一つの事件に丁寧に取り組む余裕がない、という問題は、長く指摘されてきた。また裁判官数の不足は、裁判所支部での裁判官の非常駐や支部の取扱事件の制約などの問題も生み出してきた。このような事態は全国各地の国民の裁判を受ける権利(憲法第32条)が侵害されていることを意味する。
 裁判官の大幅増員を実現するためには、財政措置として裁判所予算が大幅に増額されなければならない。近年の裁判所予算額の推移はこれに逆行するものであり、国民の裁判を受ける権利という観点から看過できない水準にまで落ち込んでいる。
5 裁判所予算の不足は、裁判所の物的施設の充実をも阻害している。
 裁判所支部等には多機能トイレがない庁舎があるなど、バリアフリー化が進んでいない。小規模支部ではTV会議システムの導入が遅れ、遠隔地支部での証人尋問等に不都合をきたしている。
6 裁判手続そのものも、予算不足の悪影響を受けている。
 簡易裁判所での証人尋問等について、尋問調書の省略を徹底する取扱いがなされている。書記官の負担軽減(背景には人員不足がある)と反訳費用の節減が原因であることは明白である。
 地方裁判所でも、尋問調書に項数が表示されなくなっている。証人尋問等の反訳は平成21年度以降最高裁が一括発注しているが、経費削減のため、発注仕様に「項数表示」が含まれていないことが原因である。
 このような裁判手続自体の過度の簡略化は、裁判所を利用する当事者である国民の負担を増やすだけでなく、裁判官(特に上訴審)の業務の効率にも悪い影響を及ぼし、「迅速な裁判」の要請に反することにもなる。
7 以上のような、裁判所予算の不足による弊害、とりわけ裁判官を含む裁判所職員数の絶対的不足は、司法機能の弱体化をもたらす。
  充実した司法の実現、迅速な裁判の実現のためには、裁判所予算を大幅に増額することが絶対に必要である。
8 よって、頭書のとおり声明する。
 
平成26年(2014年)10月22日
                       岡山弁護士会       
                        会長 佐々木 浩 史
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