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「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明
2014.04.01
「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」に抜本的修正を求める会長声明
 
1 厚生労働省は,昨年12月に成立した「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正生活保護法」という。)に関して,「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」(以下「省令案」という。)の概要を本年2月27日に発表した。しかし,省令案の内容は,いわゆる「水際作戦」を合法化するとの批判を解消する方向でなされた改正生活保護法に関する国会での法文修正,政府答弁や参議院厚生労働委員会附帯決議をないがしろにするものであり,到底容認することができない。
2 改正生活保護法案の内容は,保護の申請に関して,従来とは異なり,書面による要式行為とし,申請時に保護の要否判定に必要な書類の添付を要件としているように読めたため,違法な水際作戦を合法化するものとして厳しい批判にさらされた。また,扶養義務者に対する通知義務や報告要求を定めていたため,事実上扶養が保護の要件とされるのではないかとも批判された。
 そこで,国会における審議では,現行の運用を変えない旨の政府答弁が繰り返され,それに沿う形で法文修正が行われ,通知や報告要求を行うのは「極めて限定的な場合に限ることにし,その旨厚生労働省令で明記する予定である」とされた。
 参議院厚生労働委員会でも,改正生活保護法案に対し,「これまでの取り扱いに今後とも変更がないことについて,省令,通達等に明記の上,周知するとともに,いわゆる水際作戦はあってはならないことを,地方自治体に周知徹底する」などと,7項目にわたって詳細に言及する異例の附帯決議を行った。
3 しかしながら,法文修正等によっても修正の趣旨がなお不明確であり,改正生活保護法案が成立すると,不明確な法文が一人歩きし,申請を要式行為化し厳格化したものであると誤解され,違法な水際作戦をこれまで以上に助長,誘発する可能性が極めて大きい。また,従前の運用を変更しないのであればそもそも法文の新設は不要なはずであった。
 このため,当会は,平成25年6月12日,生活保護法改正に反対する会長声明を発表し,また当会の所属する中国地方弁護士会連合会は,平成25年10月11日,すべての人に生存権を保障するため,生活保護の利用を妨げる生活保護法の改正に強く反対する旨の決議を採択した。にもかかわらず,昨年12月にこのような反対を押し切る形で改正生活保護法が成立したものである。
4 このような事情があるにもかかわらず,省令案は,以下の通りこれらの法文修正等を骨抜きにするものとなっている。
 第1に,省令案は,「保護の開始の申請等は,申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする。ただし,身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は,この限りではない。」として,書面申請が原則で,口頭申請が認められるのは例外的とされており,国会での答弁に反する内容となっている。
  また,改正生活保護法第24条1項但書は,単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに,省令案は,上記のとおり「保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は」として特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねており,恣意的な判断がなされるおそれのある内容となっている。
  第2に,改正生活保護法第24条2項については,要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取り扱いに変更がないことを省令に明記すべきであるのに,省令案にはこの点に関する記述が一切存在せず,参議院厚生労働委員会の附帯決議に明確に反するものとなっている。
  第3に,改正生活保護法第24条8項及び同法第28条において,扶養義務者に対する通知や報告要求を行うのは極めて限定的な場合に限るという国会答弁通りの内容を省令に明記すべきであるのに,省令案は,原則として通知や報告要求を行うものとし,「保護の実施機関が,当該扶養義務者に対して法第77条1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合」など3つの場合を規定し,それらに該当する場合にのみ例外的に通知や報告要求を行わないとしている。これは,原則と例外を逆転させるものであって,国会答弁に全く反する内容となっている。
5 以上の通り,このたび明らかにされた省令案は重大明白な問題点を数多く含む内容となっている。このような省令案がそのまま成立してしまえば,「書類が整わないと申請を受理できない」などの口実で申請を受け付けず,単に相談を受けたのみの扱いとするなどの違法な水際作戦にお墨付きを与え,生活保護の利用を妨げる結果となる。このような事態は,まさに当会及び中国地方弁護士会連合会が危惧した事態にほかならない。
 国会答弁によって批判をかわしつつ改正法を成立させながら,省令において国会答弁とは全く反する内容を規定することは,国会軽視とのそしりを免れず,ひいては国民主権を否定するものである。生活保護の申請を妨げることは,国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(憲法第25条)を侵害することになり,基本的人権の擁護を使命とする当会としては到底容認できない。当会は,上記の政府答弁や法文修正,附帯決議の内容を真摯に反映した省令へと抜本的に修正することを強く求めるものである。
 
2014年(平成26年)4月1日 
岡山弁護士会            
   会長 佐々木 浩 史
 
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