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「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
2013.10.09
「特定秘密の保護に関する法律」制定に反対する会長声明
 
 2013年9月3日,内閣官房より,「特定秘密の保護に関する法律案の概要」が示された。現在,政府が法案化作業を進めており,閣議決定を経て,今月招集される予定の臨時国会に提出される可能性が高い状況にある。
 特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という。)は,2011年8月8日に公表された,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下,「有識者会議」という。)による「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」に基づくものである。当会は,2012年5月10日,「秘密保全法制に反対する会長声明」において,同報告書に基づく秘密保全法制の整備が憲法上の諸原理と正面から衝突するものであることから,その制定に強く反対する旨表明し,日本弁護士連合会(以下,「日弁連」という。)においても反対の意見表明がなされた。
 今回,意見募集に付された本法案については,当会及び日弁連の見解に多少配慮していることは窺えるが,基本的には,上記会長声明及び意見書において,同報告書に対し行ってきた批判がそのまま当てはまるものである。
 本法案について,日弁連は2013年9月12日付で「「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書」を提出し,本法案について強く反対する旨表明しているが,当会も,同法案の制定には強く反対する。
 本法案の問題点は以下の通りである。
1 国民主権原理や国民の憲法上の権利などに重大な影響を与えるおそれのある法案の立法化が是認されるためには,当該法案を必要とする具体的事情(立法事実)の存在が必要不可欠である。
 ところが,有識者会議において紹介された過去の情報漏えい事案については,既に必要以上とも言える対策が採られている。従って,秘密漏えいを防止するために新たな立法を必要とする立法事実は存在しない。
2 本法案では,秘密指定の対象となる「特定秘密」の範囲を,(1)防衛,(2)外交,(3)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止,(4)テロ活動防止の4分野とし,別表で項目を挙げている。
 しかし,これによって秘密指定できる情報の範囲は広範かつ不明確に過ぎる。第1号(防衛に関する事項)は,自衛隊法別表第4と同じであり,何ら限定していない。第2号(外交に関する事項)は,「安全保障」の範囲が無限定に広がるおそれがある。第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)は,「外国の利益を図る目的」「我が国及び国民の安全への脅威」「その他の重要な情報」など抽象的で曖昧な文言になっており,範囲が極めて不明確である。第4号(テロ活動防止に関する事項)は,政府がどのような「テロ活動」を想定するかについての歯止めもなく,政府の主観的な判断次第であることから,際限なく範囲が拡大する可能性がある。
 また,法律案の概要は秘密指定について有効期間を定めているが,回数制限のない期間更新が認められており,秘密指定の乱発を防止する機能を果たすものではない。
3 本法案は,特定秘密情報を取り扱う者及びその家族,同居者について,一定の事項を調査することを可能にする,適性評価制度を導入している。
 現実には,様々なリスク要因があっても情報漏えいしない者がいる一方で,リスク要因がほとんどなかった者が情報漏えいすることも起こりうる。従って,リスク情報を集積することにより漏えい事件を未然に防ぐことは困難である。
 他方,適性評価制度により取得することが可能であるとされた情報には,特定秘密情報を取り扱う本人のみならず,家族及び同居人の,他人に知られたくない個人情報が相当含まれており,プライバシー侵害のおそれが高い。本法案では,対象者の同意を要件としているが,上司等から同意を求められた行政機関職員等が真に自由な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは不可能であり,家族・同居人及び対象者の関係者については,この点,何ら配慮されていない。
4 本法案では,過失による情報漏えいも処罰するとしているが,過失犯を処罰対象とすることは,責任主義の原則からして極めて問題である。
 さらに,本法案では,国会議員,裁判官等が故意又は過失により秘密情報を漏えいした場合には懲役5年以下の刑罰を科することにしている。しかし,特に国会議員については,議員間の自由な討論や政策秘書に調査させることもできなくなるなど,議会制民主主義が空洞化する恐れがある。
 また,本法案では,既遂の場合だけでなく,未遂,共謀,独立教唆,煽動の各行為も処罰対象としている。また,秘密情報を取得する行為態様が,「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設への侵入」「不正アクセス行為」「特定秘密の保有者の管理を害する行為」である場合,行為者は処罰される。
 このように処罰できる行為の範囲が著しく広範囲・不明確であり,過剰と言わざるを得ない。また,正当な取材活動をも萎縮させ,支障を来すことになりかねず,国民の知る権利を侵害する恐れが強い。
5 本法案については,「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」等の拡張解釈禁止の規定が設けられ,また,報道の自由や国民の知る権利に配慮した条項を盛り込む動きもあるが,いずれも一般的・訓示的な規定に過ぎず,上記の懸念を払拭させるだけの実効的な措置が担保されているわけではない。
以上のとおり,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,当会は,本法案が立法化されることに強く反対するものである。
 
平成25(2013)年10月9日
 
岡山弁護士会                 
 会長 近 藤 幸 夫
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