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改正貸金業法完全施行後2年を迎えての会長声明
2012.09.10
改正貸金業法完全施行後2年を迎えての会長声明
 
 深刻化した多重債務問題を解決するため、「出資法上限金利の引下げ」や「総量規制の導入」などの内容を含む改正貸金業法が、2006年(平成18年)の第165回国会において全会一致で成立し、2010年(平成22年)6月18日に完全施行され、今年で2年が経過した。
 また、改正貸金業法成立後、政府の設置した多重債務者対策本部により、?多重債務相談窓口の拡充、?セーフティネット貸付の充実、?ヤミ金融の撲滅、?金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムが策定され、官民連携して多重債務問題の解決に当たってきたところである。
 当会でも、無料相談窓口の設置や行政との連携など、多重債務者の救済活動に総力を挙げて取り組んで来た。
 その結果、5社以上から借り入れを行っている「多重債務者」の数は、2007年(平成19年)3月末時点の約171万人から、現在では約45万人と大幅に減少し、自己破産者の数についても、2006年(平成18年)度の約16万人から、2011年(平成23年)度には10万人を下回るまでになっている。
 以上に加えて、経済生活問題を原因とする自殺者数は、2007年(平成19年)度は1973人であったのが、2011年(平成23年)度には998人にまで減少しており、ヤミ金融被害についても、ピーク時の2003年(平成15年)と2011年(平成23年)で比較すると、被害額では322億円から118億円に、被害者数では32万人から5万人にまで、いずれも減少している。
 2008年(平成16年)秋のリーマン・ショックや、それに続く欧州金融危機などの全世界的な経済状況の悪化にも関わらず、以上のように、多重債務問題の深刻化が目に見えて抑制されているのは、やはり改正貸金業法によるところが極めて大きく、これは国民生活の安全・安心という観点から高く評価されるべきである。
 ところが、現在一部の国会議員が、「正規の業者から借りられない人がヤミ金から借り入れざるを得ず、潜在的なヤミ金被害が広がっている、零細な中小企業の短期融資の需要がある」などとして、上限金利の約30%への引き上げ及び、総量規制の撤廃等を主張している。
 しかし、ヤミ金融被害については、上述のとおり、2003年(平成15年)のヤミ金対策法施行、犯罪利用預金口座凍結、犯罪利用携帯電話の利用停止、警察による取り締まりの厳格化などにより、被害人員、被害額とも減少の一途をたどっている。2011年(平成23年)4月に行われた金融庁の委託調査によれば、金融機関に借り入れ申し込みをした2082人のうち、希望どおりの借り入れができずヤミ金融から借り入れをした者は10人とのことであり、回答者全体に占める割合はわずか0.5%に過ぎない。
 他方、中小企業の短期融資需要についていえば、そもそも法人は改正貸金業法における総量規制の対象外とされている。さらに、個人事業者に関しても、総量規制を超える例外的貸付が認められており、既に一定の実績を有している。金融庁による全国の商工会議所へのアンケート調査でも、中小企業の資金繰り悪化の要因としては販売不振や震災の影響などが大きな比重を占め、改正法の影響は極めて小さいことが分かっている。
 従って、一部の国会議員による制限金利・上限金利引き上げと総量規制撤廃を求める主張は、その前提を明らかに欠くものである。
 改正貸金業法成立のきっかけとなった多重債務問題の深刻化という当時の状況を思い返せば、そもそもその原因こそが高金利の短期融資だったはずであり、これをまた認めることは、改正貸金業法とそれにつながる官民一体となった努力により減少傾向にある、高利に苦しむ多重債務者と多重債務被害を再び増やす結果を生むだけであって、絶対に問題の解決にはつながらないことは明白である。借りられない人や企業に必要なのは、総合的な救済施策であって高利貸しではない。
 景気の急速な悪化を受けて、政府は緊急保証制度、セーフティネット貸付、返済猶予や融資の条件変更を促す中小企業金融円滑化法などの施策を次々と実行し、中小企業の資金繰りを支援してきた。
 また、ヤミ金融被害を根絶するために必要なのは、ヤミ金融の取り締まりの厳格化や、借りられない人に対するセーフティネットの活用、相談体制の充実などの対策である。
 このような着実かつ総合的な施策によって、そして高金利・過剰融資という多重債務被害の原因を根本から断ち切るための改正貸金業法によって、多重債務被害がはっきりと減少していることは既に述べたとおりであり、そしてこれを覆すような社会的事実は全くない。
 いずれにしても、高金利の短期融資に頼った者が、これを返済できなくなり、高金利の短期融資すら受けられなくなった場合のことを考えれば、高金利の短期融資に頼る前に、別の解決策につなげた方が適切なのは明白であるといえる。
 今必要なのは、国民の総意により成立し、その生活を安定させるために高い効果を上げている改正貸金業法の見直しではない。その目的をさらに充実させるための取り組みである。
 本会は、改正貸金業法が完全施行され2年を迎えるにあたり、改正貸金業法の成果を評価したうえで、残された課題にも積極的に取り組んでいくことを確認するとともに、多重債務問題対策を後戻りさせるような金利規制・総量規制を緩和する法改正に強く反対することをここに表明する。
 
2012(平成24)年9月10日
岡山弁護士会
会長 火 矢 悦 治
 
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